第3話 結構経った
生まれてから4年が経った。これまでの間に両親のことを聞いたり、兄と遊んで喧嘩をしたり、いろいろとあったが、ここでは割合させてもらう。
そして今日、俺は五歳の誕生日を迎える。前にも言ったがうちは農家だ。そして農家には魔力が不可欠である。その魔力を今日ははかる儀式が行われるため、村は軽いお祭り騒ぎだ。もしこれで魔力がないなんてことのなったら大変だ。
■
夕方、夜の帳がかかりだしたとき、村の中心になっている広場には祭壇と一つの水甕が用意されていた。祭壇の端には白い装束姿の巫女さんたちが三人、水甕に向かって色とりどりの不可視の光線を送っている。これが魔力である。
「レイエム、前へ」
この村の村長にそう言われ、白い袴一つしか羽織っていない俺は水甕に近づいていく。
水甕に一定距離近づくと、結界のようなものを張られる。後に聞いた話だと、この結界の内側にある魔力を外に出さないようにする逆結界だったらしい。
水甕の前に来ると傍に居た巫女さん達が何かを唱えだす。
唱えている呪文のようなものが終わると、水甕に入っていた普通の水が透明な光を放って光りだす。その光は次第に強力になっていき、天高く雲を掻き分け一本の光の柱になった。
周りで見ていた村の人たちは「おぉー」と感嘆の声をあげているが、周りの巫女さんたちは額に玉の汗を浮かべ、必死に何かの呪文を唱えている。そして、その顔の必死さも次の瞬間には無くなる。
どぉぉおーーん!
大きな爆発が起こり、俺を中心に半径30メートルが吹き飛んでいった。不思議なことに俺に怪我はないが、広場付近に建っていた家屋はすべて元の形もなく吹き飛んでいた。広場に居た人たち、巫女さんたちも含めてみんな地に伏せて気絶していた。
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あの後、30分ほど、みんな気絶したままだったが、最初に目を覚ました巫女さんに手伝ってもらってみんなを起こすことができた。
そしてその後、なぜか村のみんなにこっぴどく叱られ、後日巫女さんの家に行くことにまでなってしまった。一体俺が何をしたって言うんだろう。
倒れた家などはうちが修理代を払うということで、親にまでこっぴどく叱られたよ。
■
後日、俺は呼ばれた通りに村の外れにある巫女さんたちの暮らしている神殿まで来た。神殿といってもそんなに豪華なわけじゃなく、昔からそう呼ばれているからそう呼んでいるだけにすぎないが。
「すいませーん」
神殿の隣にある東屋のような所の戸をノックする。
しばらくすると、中から昨日一番最初に目を覚ました女の人が出てきた。
「よく来たね。入っていいよ」
「お邪魔しまーす」
「あらまあ。うふふ」
?俺は首を傾げながら家の中に入っていく。この世界は土足OK だ。
中には昨日居た巫女さんのほかに二人、別の巫女さんもいて何やら分厚い本をぶつぶつと声に出して読んでいる。
「こっちこっち」
俺は案内してくれている巫女さんの指示に従って奥の部屋に案内される。
「少し待っててね」
そう言って案内をしてくれた巫女さんは部屋から出ていった。
一体これからないがあるんだろうか?まさかエロマンガのような展開に?!なんていう発想も出てきたが、今の俺の体じゃストロー程度の細さしかなくそれはないなと気づく。そうなると、一体なんで呼び出されたのだろうか?昨日の事には関係しているとは思うんだけど。
そんなことを小さい頭で考えていると部屋の戸がノックされる。
「トイレとか行かなくて大丈夫かな?これから少しお話をするんだけど少し長くなるからさ」
入ってきたのはさっき案内してくれた巫女さんだった。手にはトレーを持っていて上にはコップが乗っている。
「じゃあ話を始めるね」
巫女さんが座ってから話が始まった。
なんだか遠回しに伝えてくることが多かったが、それは俺が小さくてわからないだろうと高をくくってのことだろう。残念だが全部理解してるんだなー、これがさ。
聞いた話を要約するこうだ。
・俺は持っている保有魔力?がとても多いらしい。
・今のままじゃ誰かを傷つけてしまう。
・制御しないといずれまた同じことが起きる。
何が伝えたかったというと、魔法の勉強をここでしなさいということだ。全く回りくどいんだから。幸いこの世界の言語も文字も全部知っている。知っているというと語弊が生まれるが。
「要は巫女さんが俺に魔法を教えてくれるってことですよね?」
「え、ええ。まあそうなんだけどよくわかったね。えらいえらい。それとレイエムちゃんは女の子なんだから俺じゃなくて私だよ」
俺は巫女さんによしよしと頭を撫でられるが、悪い気はしない。なんてたってこの巫女さんめっさ綺麗なんだもんな。それに忘れていたが俺は女の子だったな。気をつけないとな。
「もちろん私たちはレイエムちゃんには魔法を教えてもいいんだけど、まずはママにいいよってしてもらわないとダメなんだ。一緒にママの場所に行こうね」
そういうわけで俺と巫女さんは俺の家に行くことになった。
■
「ええ、どうぞ。お願いします」
親に断りを入れに行くと、物の三秒でOKが出た。なんて親だ。父親の方は少し渋っていたが、母親は即答だった。
明日からは俺の魔法練習が始まる。
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