第2話 尻が痛い

意識が芽生えると、俺の体は窮屈に押さえつけられているのが分かった。

俺が居るのは小さな包まれた空間。なんだか安心する感じだ。

外からは苦しみに喘ぐ声や、それを応援する声が聞こえる。


少しして、急に体が空間の奥底に沈んでいくのが分かった。頭が、いや、頭蓋骨が割れるかのように痛い。


頭の痛みが治まると、瞼の裏側に光が差してきた。


俺は今、初めて目を開ける。そこには、しわくちゃになった顔をしているおばあちゃんと、若い可憐な女の人、頭のてっぺんが寂しいおっさんが立っていた。

俺のことをひょいっと若い女の人が持ち上げるが、その表情は深刻だ。

にしても俺は高校一年だぞ?さすがに持ち上げるのは無理だろと、口を開こうとしたとき…。俺のケツに激しい痛みが走った。


オギャー オギャー オギャー


とっさのことと、その痛みに俺は素直に涙を流して泣いた。そして俺が泣いたことに安堵する若いお姉さん。そんなに俺が泣いたのがうれしいのだろうか?どんなSだよ。

そんなことを考えながら辺りを見回し、辺りの光景に驚く。



痛い思いをしてから幾分かが経った。

俺のあの時の疑問がすぐに解決した。

俺もよく知っているラノベとかに出てくる『異世界転生』ってやつだったみたいだ。


意識がある状態での出産された経験をしたのは人類広しといえど俺ぐらいだろう。しかし、出産って大変なんだな。改めて女性の神秘を感じたよ。でもな…


「おい!妹!」


なんで、なんで俺は女に生まれてきたんだ?!

普通こういう異世界転生系って同性で生まれてくるんじゃないの?!

それに俺に声をかけてきたこいつ、俺の今の兄なんだが。

鼻垂れ小僧の癖に、なんで上から目線なんだこいつ?

歳もそんなに変わらないはずなのに。


「それよこせよ!僕のだぞ!」


そう言って何もやることのなかった俺が唯一見つけた暇つぶしの玩具を横取りしていった。別にそんなもの取られてもなんともないが、ただでやるのは癪だ。


オギャー オギャー オギャー


まだ声帯が発達していないのか、しゃべることはできないが、泣くことならできる。

俺が泣くと、すぐに部屋のドアが開き、一人の女性が入ってくる。


「こら!またレイをいじめて!こっちに来なさい!」


そう言って、兄の首元をつかんで部屋を後にしていった。兄は猫のように抱えられて心底悔しそうな顔をしていた。

兄が居なくなった部屋には俺と玩具たちだけが取り残されていた。

兄が居なくなってしまってやることがなくなってしまった。

暇つぶしに自己紹介でもしようか。


俺の…いや、私の名前はレイエム。普通の村に生まれ、農家の家に生まれた。

この世界の農家はかなり懐が温かい職業の一つだ。

この世界には普通に人類に敵対するもの、魔物が居たりして、管理するのが大変なんだ。

そんな管理の大変な場所をどうやって管理しているのか?その理由は地球で普通に暮らしていたなら出てこない手段だった。

答えはTHA異世界って感じなものだった。その方法とは魔法だ。うちは昔から魔力をもって生まれてくる世代が多く、多分だが俺もそうだろう。

って、俺は誰に話しているんだろうか。


突然だが、赤ちゃんの本望ともいえる睡眠欲が襲ってきた。ここは素直に従うことにするか。



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