異世界カンジー

因幡 天兔

第1話 死にました

まずは自己紹介をしよう。


俺の名前はたちばな瑞樹みずき、15歳。趣味は読書と料理だ。父と母はどちらも書道家で、父はプロ、母は書道教室を開いて先生をしている。そんな両親なことあって、俺も子供のころから書道や漢字検定やらの資格を取ったり、学校での国語の成績はいい方だ。学校でも、友達がいなくてボッチってこともなく、スクールカーストでも上位にはいると思う。

そんな俺がなぜ、こんな場所にいるのかというと。



俺は書道部に入っているが、今日は部活が休みということもあり、他の生徒より早く帰っている。

季節は夏。家までの帰り道に日陰という日陰もなく、肌着が肌に張り付いていた。

家にも俺が帰る時間には両親どちらも出払っていて、家には誰もいない。

家は和モダンであまり涼しいとは言えないが。

家に着いたが、やはり誰もいなくて、家の中は蒸し暑い。そんな日には冷たいものが飲みたくなるよね。

俺は冷蔵庫のあるダイニングキッチンに向かった。冷蔵庫の中には黒い炭酸飲料。コーラのラベルが書かれたペットボトルがキンキンに冷えて置いてある。俺はそれを手に取り、キャップを開ける。一度開いていたのか、炭酸を開けた時のあの音が聞こえなかったが。


ゴクゴクッ

おえぇぇ


親や兄弟が書道をやっていたらわかる人もいるかもしれないが、作った墨汁をペットボトルに入れてる人がいるんだ。俺の親もそうだったみたいで、俺が飲んだペットボトルの中身もそうだった。


そのあとは目の前にいる人から聞いたんだけど、俺、墨汁を飲んだショックで死んだらしい。なんとも恥ずかしい限りだ。



「で、君はこれからどうしたい?」

「うーん、やっぱり転生ですかね」


目の前のアフロなひとは俺に、このまま輪廻の輪に戻って地球で生まれ変わるか?それとも、別世界に行って生まれるかの二択を選べと提案してきた。


まぁ、中学生で異世界物の本を読んでいる俺からしたらもちろん転生一択なわけで。


「で、何か転生特典みたいなのってもらえるんですか?」

「いや、そんなもんないよ。君は知識を持っていくわけだしさ」


なんと!転生ものお決まりの最強能力はもらえないんですか?!


「じゃあ、転生ってことだからがんばってねー」


アフロの人は俺に手を振る。いやっちょっとまっ―――。

俺はそのまま意識をなくした。

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