人の企て
ムハト霊宮のテルサテルサは人が人の家となるべきことを説いた。生ける者の都市テルサはいまもエーザグリザ盆地に蠢き、培養した后虫を食らい、呻き、やがては自らの一部となる住人たちを幸福のうちに養っている。
ハルガムツツレの僧侶たちは自分たちの夢に街を築き、そこに人々を匿うことを企てた。彼らの多くが、自ら作り上げた街に迷い、戻らなかった。彼らは同じ運命を辿った夥しい教団や学派のうちの一つに過ぎず、すぐに、みずからと他との区別を失った。
あやとりによって百の宝石、七カ国の金銀銅貨、人間とその悩み、記憶と歴史を作り上げるサ・スーア・ポーレの技を目の当たりにしたカリカフールの住民たちは、次は天国を作ってくれと長命の者に要求した。そのとき、傘職人であったベオメトケの長男は人ごみのなかに借金取りの顔を見つけ、家に逃げ戻った。しばらくして、半ば黴でできた家を訪れた古老から、そのとき広場にいた人々が一人残らず消え失せてしまったことを聞かされた。
ケビヒの王ゴーアール・レトートの説いたところによれば、ナ界がその隅々までイツルァパーサに呪われていることは疑いないとしても、星々の世界はいまだ無垢だった。天体の規則的な運行が王の論拠だった。この説はゴーアールの苦しむ民に、いかにささやかだったとしても希望の冠を与えるものだった。ある晩、星々はてんで出鱈目に夜空を這いずり始めた。それは蜘蛛の子が逃げ惑うさまに似ていた。王はそのときから高熱に魘され、瞼を閉じているときも開いているときも、目に見えるものは気ままに視野を動き回るあれらの星々だけだった。
ゾーペム・ペアトはあらゆる人間に救いへの希求を植え付ける呪いを試みた。そうすれば幾千億の無益な企ての果てにどこかの誰かがたった一つ真の救いに辿り着くかもしれない。この呪いが成功したか否かは定かではないが、ゾーペム・ペアト自身がその希求を欠いていなかったことは間違いない。彼はイツルァパーサに旅立ち、二度と戻らなかった。
ゼ・イェ・ア・ケ・ア・トラス・ズルア・ア・オ・アーテは、ナ界において過去にも未来にも生まれることのない身でありながら、ナ界においては過去にも未来にも生まれることのない全ての者もまた苦痛と絶望に満たされていることを証明した。
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