粉碾きの話
デレンゼエーリのペトフルール王は貧しい者の出、虫けらや朽葉に等しい生まれであったが、ケジャルクジャル王に重用されついにはその位を継いだ。ケジャルクジャルの相次ぐ戦で荒れすさんだ国を建て直し、世を平らかに鎮めた。ペトフルールはケジャルクジャルを思うたびに、自らの治世で物柔らかに温良になってゆく民のことを心苦しく感じていた。老いたペトフルールは無謀な戦を始めた。彼は自ら築いたものを台無しにしてしまった。デレンゼエーリは滅びた。あとに残ったものはかつて人と家であった炭だけであった。
デレンゼエーリはプーパープピローの麦粒のうちに位置した国である。
かつて飢えの国プーパープピローの善良な農夫が粉碾きの神ジルミルエルヘに国の栄えを願ったところ、ジルミルエルヘはこれを聞き届け、プーパープピローに実るすべての麦のすべての粒のうちにひとつの世界が宿るようにした。
これによりプーパープピローはその領地に比類なき多くの富と知恵、命と奇跡を蔵する国となり、プーパープピローの民は一食のために最も多くを殺し、奪い、滅ぼす民となった。
しかし依然としてプーパープピローのいかなる片隅にも飢えの宿らぬところはなく、民は襤褸を纏い、夏の暑さと冬の寒さのたびに死に瀕するのであった。
ジルミルエルヘよ、我ら賤しき粉碾きを守り給え。さらに多くの麦粒を碾かせ給え。み前の世がますます美しい粉と碾かれますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます