第31話 『革命』 その12

 キューさんが続けました。


「同志諸君、91階の『主様』が、このモール全館征討を成し遂げるため、諸君が持っている情報を、ここで提供してほしい。どのような些細な事でも良い。特に『地主様』に関する情報は重要である!」


『ふ~~~ん。そう来たか。でも、なんだか恐ろしく計画的なような・・まあ、ロボットだしなあ・・・』


 ぼくはそう思いました。


「はあ~~~い、」


 一人が手を挙げました。


「はい、あなた。」


「地主様は、天界に連れて行かれたと言う情報がありましたあ。」


 相当、ハイになってる感じの若者が言いました。


「なぬ、天界?」


「そう。天界。」


 『天界』と言うのは、このモールの最上階の、さらにその上にくっ付いている例の謎の構造物のことです。


 『天国』とか『異世界』とか、いろんな呼び方があるようなのです。


 150階建てのこのモールの上部に、さらに100階以上に及ぶ建物があるのです。


 しかし、それがいったい何なのかは、誰も知りませんでした。


「どこから出た情報であるか?」


 キューさんが尋ねました。


「『移動薬売り』のおじさんで~す。」


 ぼくも、『移動薬売り』のおじさんの噂は知っています。


 モール内の店舗を回って、置き薬を販売しています。


 薬だけでなく、おいしい『せんべい』とか『飴類』とかも扱っています。


 あまりにおいしいので、薬よりそちらの方が人気とか。


 『天界』で作られてるのではないか、なんていう噂もありました。 


 しかし、神出鬼没で、いまどこにいるのかは、全くわかりません。


「ふうん・・・あのおじさんは、ぼくの情報網にかからないね。」


 キューさんが、ぼくにささやきました。


「他には?」


「は~~~~い。」


「はい、きみ。」


「モール『元少年探偵団』の連中が、『天界の使者』と遭遇したと言っていました。」


「いつ、どこでか?」


「つい最近ですよ。人間でもロボットでもない、ふわふわと浮かぶ不思議な物体で、110階の『第26倉庫』のなかを漂っていたとか。」


「その『元少年探偵団』の本人に合えるか?」


「110階の事務所にいます。通称『なんでもやくまさん』くんです。」


「そうか。ほかに? なんでも良いのね。」


「は~~~い、」


 一人の女性が手を挙げました。


「はい、あなた。」


「聖なるお祈りの言葉の由来は、わたし、じつは、恥ずかしいけど、知りませんけどお、なんでも下層階に行くほど、古くなるとか聞きました。」


「そうそう!」


 周囲の女性店員さんたちが肯いています。


「古くなる?」


「はい。原初形態に近くなるとか。ただ、かなり『秘教化』していて、なかなか儀式には入れないとも聞いた。ね?」


「そうそう、ごく一部の会員しか入れない。通常の我々のグループではないとか。大体下層階の、15階あたりから下は、そんな感じらしいですよ。」


「興味深い。接触は、出来ないのか?」


「誰が会員なのか、分からないのです。まったく『秘密結社』みたいな感じらしい。情報を漏らしたら『死刑』とか聞いた。」


「そうそう。消えちゃうとか。」


「うんうん。跡形もなく、消える、らしいです。」


「ほう・・・・・」


 ぼくは、聞きながら、なんとなく、いやあ~~な感じがしてきました。


 どんどん、危険な領域に入って行く感じです。


「なるほど。」


 キューさんが大きくうなずきました。


「91階の『主様も』満足であらせられるようだ。他には、ないか?・・・・・」





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