第29話 『革命』 その10
********** **********
ずいぶん長い時間、平伏させられていました。
しばらくすると、司祭が、例のおまじないを唱え始めたのです。
みな、その声に従って、こんどはまだ顔を伏せたまま、その呪文を唱えてゆきましたのですが、その響きは、ややくぐもりながら、不気味に会場内を渦巻いていったのです。
『うんじゃー まいやら うんじゃー まいやら うんじゃー まいやら・・・・・』
やがて、司祭が言い放ちました。
『みな、顔を上げよ。その顔を巫女様にお見せ、せよ!』
『はは~~~~~~~!!!』
どわどわと言う感じで、全員が顔を舞台に向けたのでした。
『ぶわ! うそ、・・・お嬢!』
そうなのです、そこに立っていたのは、紛れもなく、さっきまで一緒にいた、お嬢ではありませんか。
しかも、スワンが、頑強な付き人のように傍を固めていました。
『巫女様! 万歳あ~~い! 万歳あ~~~~い! 巫女様あ~~~!! 万歳ぅおあ~~~~~~い!!!』
どこかの『ハード・レトロ・ポップス』グループの、ファンクラブ大会のような歓声が上がりました。
その歓声が鳴り響くまま、お嬢は会場を見渡していました。
目が座っています。
普通じゃない感じがします。
それから、お嬢は、やがて、お嬢の足元、かぶりつきにいた、ぼくらを、じっと見下ろしました。
お嬢の、その足が、ぼくの目の前にありました。
伝統的な『巫女スタイル』ですが、素足です。
指が、結構太いのには驚きました。
『みなのもの、よくぞ、集まってくれた!!』
『うわ~~~!!! 巫女様ぅまあ~~~~!!』
再び、さらに激しく歓声が上がりました。
絶大な人気があるようです。
でも、なんか、変です。
どこか、おかしいぞ。
『みなのもの、良く聞け。ついに、『革命』の幕は開いた。新しい時代が来るのじゃ。誰も拒めはしない。たとえロボット政府であろうが、ものの数ではない。
突き進め! 打ち破れ! 』
『うおぁ~~~~~~~!!!!!!』
『みな・・・今日は、ここに、偉大なる、あの91階の『主様』がおられる。91階で、『革命』の火花を、まさに最初に放った方であり、我らの英雄である。91階の『主様』は、このあと、この全モールの開放に乗り出されるのじゃ。ついに、その日は近い。みな、聴け!! 偉大なる91階の『主様』の声を!!』
『うぉあ~~~~~~~~‼!!!!!! ! ! ! !』
「なななな、なんだあ~~~~~???」
ぼくの横で、キューさんが立ち上がりました。
「さあ、出番ですよ。」
「はあああ~~~~~~???」
キューさんは、いぶかるぼくを、ものすごい力で引っ張り上げ、舞台まで強制的に引きずって上がったのでした。
************ ************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます