第28話 『革命』 その9
「あんなの持ってたかな?」
「いえ。91階ではなかったね。どうやら階によってバリエーションもあるようね。」
「ふうん・・・まあ、ありうるか。独自性ってやつだな。」
「し!」
司祭が、いったん座っていた、やたら大きな椅子から立ち上がって、舞台の一番前の端っこに立ちました。
ま、ぼくらは、かぶりつきにいる感じになってます。
『ありがたくも、この時にいたりて、感慨無量なものがある。わがはらからよ、ついに時は来たりぬ。いまこそ、革命の火花がほとばしるべき時が来た。われら人間は立ち上がり、にっくきロボットめらを、駆逐させんと欲するのである。』
『うわ~~~~!!』
と歓声が上がりました。
『これは、天の声である。『ロボット革命同盟』が、戦闘の口火を切ったのである。遅れてはならぬ。すでに、各階の同志たちが、立ち上がりつつある。後戻りはもはやできない。『難民連合』などは、いまだ逡巡しているが、笑止。この機をのがさず、このモール全体が、わが革命の舞台と化すのだ!』
「こいつ、なに言ってるんだ?」
「宣戦布告ということね。」
「誰に?」
「ロボット政府ね。」
「まあ、そりゃそうだろうけど。ええ、えらいこっちゃ。喧嘩は嫌いです。」
「あなたすでに、巻き込まれてますね。」
「はあ・・・」
キューさんは、周囲に一定の条件が整うと、『防御モード』から『戦闘モード』に移行するのですが、ぼくは、まだそう言うことはまったく知りませんでした。
そもそも、キューさんの素性なんて、まるで知らなかったのですから。
『いまこそ、我が『巫女様』が登場なさる時となった。『巫女様』が、われらの未来を、まさにここでお決めになる。みな、唱えよ。そうして、わが声に合わせて、つぎにひれ伏せよ!』
『うんじゃー まいやら うんじゃー まいやら うんじゃー まいやら・・・・』
その祈りの声は、ますます高く激しくなりました。
「合図があったら、頭下げないとまずいね。」
キューさんが言いました。
「はいはい。」
『うんじゃー まいやら!』なんて叫べませんけど、頭下げるくらいは会社でも慣れております。
『みな、しずまれ! 平伏!』
あたりは、一瞬にして、静寂に包まれました。
周囲の人々は、いっせいに、頭をがくんと下げたのです。
ぼくは、一瞬遅れて、平伏したのでした。
やがて、静かな足音が、ぼくのすぐ頭の上に聞こえてきたのです。
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