シェアハウス

小松菜という名のほうれん草

部屋案内

第1話 灰色

 僕は知らない部屋の天井を見ていた。

何時からここに居た?窓も扉も無い。どうやって来た?何も分からない。

遠くから笑い声が聞こえる。もしかしたら、外に出られるかもしれない。

僕は叫んだ。外の誰かに届くまで。


 

 笑い声が止んだ。誰かの足音がこちらへ向かってくる。

届いた。嬉しくなって涙が溢れてきた。でも待って、この部屋には扉が無いんだ。

また押し寄せてくる絶望。心なしか灰色の部屋が少し暗くなった気がする。

膝を抱えて瞼を伏せた。




 ガチャリ




「いつから起きていたの?」

明るい女性の声。さっき笑っていた人。

細くて綺麗な脚、ショートパンツ、タンクトップ、茶色いさらさらヘア。

目のやり場に困るな。目をそらして答える。


「ついさっきです、おそらく。どうやってこの部屋に来たのか覚えていなくて…。あなたがその扉を開けるまで、出口が無かったから困っていたんです。ありがとうございます。」

彼女の目が大きくなる。扉の向こうの人たちが困惑している。


 スッと息を吸う音が聞こえた。

「…そうだったの!なら、此方へいらっしゃいな!」

彼女の声は先ほどのものより何倍も明るく感じた。

部屋を明るく染めるくらい。

微笑んだ後、回れ右をする。



それに続くように僕は立ち上がり、彼女について行った。

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