第3話 悪夢(3)

「いやだぁ! いやだぁ! 死にたくない」、


「助けて! 助けて! 朕のことを助けて! お願いだ! 李儒~!」と。


 今日も幼い男の子の泣き声……。


 前世の僕に助け! 命乞いを求め!


 でッ、最後には何太后閣下と同じように城壁の上から強引に、地面へと放り投げられ。


 彼女のように自身の顔を潰し、血まみれになりながら。


 城壁の上に立つ、恐ろしい過去の僕ではなく。


 今は穏やか、女の子に頭の上がらない、童貞君の僕へと。


 男の子も、何太后閣下のように。


 僕に対して恨み辛みを申してくるのだが。


 今日は!


 今日と言う今日は!


 僕も我慢ができなくなり!


 前世の僕へと。


「お前! いい加減にしろよ! 何で、そんな小さい男の子にまで酷いことをするんだ! これ以上! その子に酷いことをしてみろ! いくらお前が過去の僕だとしても! 前世! 今の僕はお前のことを許さない! 許さないぞ! だからその子を離せ! 離せ! こんちくしょう!」と。


 僕は何故か、こんな声を出しつつ、夢の中……。


 もしかするとここは、異空間なのかな?


 前世の僕に、僕は初めて怒声を吐いた!


 今までは、自身の目を閉じ、耳を両手で押さえても聞こえる何太后閣下と小さな男の怨霊の呻り声や恨み辛みを。


 僕は自身の両目から血の涙を流しつつ聞き、謝罪を繰り返していた。


 でも僕は今回初めて!


 前世の黒き僕! 暗黒の影に覆われた物の怪のような僕に!


 僕は罵声を吐きつつ、飛びかかり──!


 夢の中で、前世の悪魔のような奴を取り押さえ!


「その子を離せ! その子はお前に対して何も悪いことをしていないじゃないか?」と。


 僕は前世の自分へと呻り、吠え!


 パンチだよ!


 僕自身、産まれて初めての喧嘩になるけれど。


 この小さな男の子……。


 大変に大人しく、気弱な子かもしれないけれど。


 ちゃんと僕がこの子をサポートすれば。


 将来は有望な皇帝陛下になるはずだと。


 僕は何故か、こんなことを思いながら。


 前世の僕……。


 暗黒化した黒き、僕と取っ組み合い! 殴り合い! を。


「うりゃぁ!」、


「わりゃぁあああっ!」、


「こんちくしょう!」


「なめんなよ!」と。


 僕は呻り吠えつつ繰り返しながら!


 小さな男の子を前世の僕から、自分の身を挺して、初めて庇う。


 と、言うか?


 僕は自身の夢の中で、こんな荒々しいこと。


 僕にとっては初めての異世界ファンタジー的な、魔物との争いができることを不思議に思いつつ。


 僕は小さな男の子を庇いつつ、前世の魔物化、ボス化した僕と殴り合いをしていると。


「李儒ありがとう~。朕の大事な物~。宝物守ってくれて~」と。


 今まで顔が潰れ、血まみれ、恐ろしい形相でいたはずの何太后さまが、元の姿……ではない。


 そう、自身の身体を神々しく、光らせている上に。


 今まで無かったはずの大きな耳──。


 日本の男子達が好きで仕方がない……。


 そう、精霊種! 女神さまの天下無敵の、可愛い耳を装備して、僕の後方……。


 そう、僕が庇っているはずの男の子……。


 前世の僕がダメ人間の烙印を押して、殺した霊帝──。


 弁王子の姿がなくなり。


 女神化? している何太后閣下の姿が、そこにあるから。


 僕は「えぇ、えええっ! 何で何太后が僕の後ろに~!」と、絶叫交じりで叫び。


「何でぇ~、何太后さまがエルフ! 女神化しているの!?」と驚嘆を吐き。


「何太后さま、これは夢ですよね?」


 僕は前世の僕と殴り合いをしつつ、自身の顔をリアルに腫らし、鼻血を流しながら。


 彼女! 女神さま!


 それも僕の女神さまなのかな?


 まだ二十代前半の美しい、女性にしか見えない。


 金髪碧眼ではない。


 黒髪の何太后閣下へと問う。


 ◇◇◇



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