第208話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【魔物】(18)
「何をしているんだ。お前は……と、言うか? お前達は?」と。
何処からともなく聞き慣れた口煩い女性(ひと)の。そう、夏侯惇の呆れた声音での台詞が聞こえてくる。
「はぁ、はぁ~。やっと追いつきましたはぁ~。私(わたくし)の旦那さま~」
「はぁ~。もう~。姫様~。走りで姫様の大事な殿方を追いかけ、探索をするから。私は疲れましたよ……」と。
太々しく、不満のある声音で呻る。袁術お嬢さまと。疲れた。疲れましたと、相変わらず主に不満を告げる。やる気のない落胆した声音で不満ばかりを漏らす紀霊将軍の三人が埴輪の木馬。お馬ちゃん跨り騎乗と。師従仲良く歩行。駆け足で、李儒(理樹)と女神さまこと弁姫殿下へと、二人の心からの願いが叶ったかのよう。叶えてくれたように集ってくれるのだ。
……だけではない。
「我が君! やっと。やっと~。見つけましたぞ。我が君~! 一体、ここで、何を。何をなされているのですかぁ~って。えぇえええっ! こ、これは一体! 一体何ですかぁあああっ⁉」と。
新たな女性の驚愕と共に、絶叫まで吐かれる。放たれるのだ。
そう、洛陽の城郭の正門での魔王な董卓閣下の見送りの回想シーンを思い出してもらえればわかるとおりだ。
魔王な閣下の可愛い彼氏、夫、主の我儘を、ダークエルフの美しく、麗しい少女は聞き入れたはいいのだが。やはり少女は、自身の可愛い主が心配で仕方がないから。李儒(理樹)が立ち去った後も、己の背に哀愁を漂わせながら馬上から。愛する彼の背を見詰める。自分自身が愛する殿、李儒(理樹)についていき。彼を守護、守りながら。馬上にて仲慎ましく、和気藹々とした会話をしながら、埴輪の木馬で仲良く並んでのドライブを楽しみ、堪能、満喫をしたいのだが。
皆も知っての通りで、董卓仲頴閣下は、後漢の黒き宰相こと、何太后皇女殿下に代わり。この国、漢帝国の祭り事を担う少女だから。李儒(理樹)のような一臣下とは身分、身の上が違うから。彼のように、自由気ままに生きる。行動をする訳にはいかない。
だから彼女、少女、魔王な董卓閣下は。いつものらしくない自分自身……。
そう、己の身体全体から哀愁、切なさ、しおらしさを醸し出し、己の紅玉の瞳を潤ませる。いつでも泣き出しそうな様子、感じでね。
だから魔王な董卓閣下の、家臣の中でも武は右に出る者無しの誉れ高き戦姫──。オークの華雄将軍が、己の主の哀愁漂わせる容姿、様子に危惧。愁いでしまい進言──!
「閣下の代わりに私が、遠く離れた位置から護衛をしましょう。だから閣下は。そんなにも君の為に危惧。心を痛めた顔、様子をしないで、いつもの我等の神々しく、麗しい。凛とした閣下でいてください」と。
華雄将軍は魔王な董卓閣下へと告げると、彼女自身も心を寄せるハーレム仕様を、心から願望している主人公(ヒーロー)さまこと、李儒(理樹)の後、背を埴輪の木馬に跨り。騎乗しながら追いかけた。
でも、一度は見失った彼、李儒(理樹)なのだが。彼の先程の絶叫、叫びを、華雄将軍が左右に持つ、李儒(理樹)が大好きな大きな笹耳で、レーダーの如く、ピクピク動かしながら。心寄せる殿方の絶叫、叫び声で、大体の位置を特定し。慌てて駆けつけてきたと言う訳なのだ。
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