第209話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【魔物】(19)

 いざ、密かに心を寄せる異性……と、言っても、皆も承知の通りだ。この世界にアダムは、李儒(理樹)一人しかいない。この場、残りの戦姫(人)、宮殿内にいる人、この大陸……。


 いや、この世界中にどれだけいるかは、未だ創生されたばかりの世界だから李儒(理樹)には、だけではなく。誰にもわからない。理解ができないが。取り敢えずは、イブばかり。イブしかいない。生活をしていない世界だから。どうしても年頃、女盛りのイブ達は、アダムである李儒(理樹)に惹かれ、心を寄せてしまう。しまうと言うことは、基本李儒(理樹)に対しては甘い。甘いのだ。


 もう、それこそ? ハチミツ、砂糖に、飴、中華菓子に和菓子に洋菓子の甘さくらい甘いから。


 華雄将軍も常日頃から李儒(理樹)には、甘々と接しているお姉さまだから慌てふためきながら彼に追いついたまではいいのだが。いざ追いつけば、彼女の両目、瞳に映るものは、埴輪の巨人兵がそびえ立つ……だけではない。ないからね。埴輪の巨人兵を凝視すればわかる、理解ができる通りでね。


 華雄将軍が『我が君』と呼ぶ少年に対して、自分自身が持つ、握る武器──鍬を振り下ろしては地面を耕す。耕しながら攻撃を続ける埴輪の巨人兵の姿が目に映るから。


 華雄将軍はいつまでも驚愕を……って、埴輪の巨人兵を凝視して驚愕したのは華雄将軍だけではない。


 最初にこの場に、李儒(理樹)とエルフな女神さまこと、弁姫殿下の危機に一番ノリで駆けつけてきた俺戦姫さまこと、夏侯惇も、彼女が初めて目にする巨人、巨大なモンスターに驚愕──。


「……」


 彼女の様子を凝視すればわかる通りで、自身の独眼を大きく見開き、開いた口が塞がらない状態で呆然としているのと。


「何ですか、これは~? 私(わたくし)、こんな異物。魔物は初めて目にしました~」(プンプン)と。


 相変わらず不満を漏らす、エルフなお嬢さまと。


「本当に姫さまの申す通り。申される通りで。私もこんな魔物初めて目にした。見ましたよ……。長く生きていれば、本当に色々なことがありますね……」と。


 産まれた。創生されたばかりの癖に、年寄り臭いことを申す紀霊将軍も、埴輪の巨人兵の姿、容姿を、凝視をすれば、皆は立ち止まり驚愕を続けると、言うことは、長くはしない。しないのだ。


 だって李儒(理樹)と弁姫殿下御二人だけのパーティーだけだったのに、急にパーティーメンバーが追加されたのだから。


 何処かの誰か? 今迄お飾り人形だった姫さまは歓喜──。嬉しくて仕方がない。





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