第13話
街灯がない夜道を歩いて目が慣れてくると、遠くの明かりが近く感じることがある。そんなように分かりかけたと思ったら予想外にとおくにある答えが返ってきた。
彼女がいたこともなければ、告白をしたこともない。そんな僕は今想像もしない状況にある。男で年上の人に告白された。なんだ、僕は今何を考えたらいいんだ。
ちょっと不機嫌な顔をした先輩が爪をいじっている。
「黙ってないで答えを聞かせろよ。きこえただろ?好きで付き合ってほしいんだ。どうなんだ。」
どうといわれましても男の人と付き合えないし、そもそもサドルを切るような歪んだ愛情表現の人とか無理に決まってるだろう。いや、これどう返せばいいのか。
「・・・・っす。」
「なんだ?」
「無理です。男の人とは付き合えません。」
僕は今震えた声で話しているのだろう。口に力が入らない。先輩の方を見ると表情が変わっていない。
「そうか、やっぱり男とは無理だよな。そうだよな。おーい!もういいぞー!」
え、もういいぞ?先輩の視線の先に目をやると、中庭に面した校舎の二階から友だちらしき三人が笑いながらこっちを見ている。
「ごめんな、罰ゲームでお前に告白してたんだ。悪く思うなよ。ップフフフフ、アハハハ」
なんだこいつら。上から見ているやつらの中にさっき追いかけた看板娘の一人もいた。怒りを通り越した僕は足早に自転車置き場に行って帰ることにした。
ちりんちりん @t-takuro
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