第3話

僕は看板娘たちのところへ近づいて聞いてみた。

「ん?なんですか?」

自分とは違うクラスTシャツを着ているから、同学年に違いないが関わりのない人たちと話すときはどうしても敬語になってしまう。

「あ、ごめんごめん。入場門作ってるんだけどこの角の所になに書こうか考え中で、なんかいい案ないかなと思って。なにがいいかな?」

顔は知ってるけど絡みないのにすごい親し気な人だな。これがキラキラの原因か。キラキラ看板娘だ。そんなことよりすごい難しいことを言われたな。あ、そうだ。

「あ、角に?・・・コッペパンなんてどうですか?」

「コッペパン?コッペパンってあのコッペパンだよね?」

「そう、パンのコッペパン。」

看板娘たちは顔を見合わせている。驚いた様子で数秒間の静寂が訪れる。

あ、これはやってしまった。何回か経験したことある状況だ。早く逃げ出したい。

看板娘の目の会話が終わったようだ。おそらくこれが判決を聞く前の心待ちなんだろう。

「ありがとう。参考になったよ。」

「あ、そう?なんかごめんね。」

もう看板娘たちを見れるわけなく、そそくさとその場を後にした。

もっとアドリブで気の利いたことが言えていればよかったなと思いながら、中庭を離れて教室にもどることにした。

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