第8話 春はもう来ている



『春が来る、青い青い春が来る

 二度とは戻らない時を悔やみながら

 今しかできないことを探しながら

 明日の風に吹かれに行くのさ


 明日はきっと芽がでるから



 思い出す

 自分のバカさ加減を

 思い出す

 いいことも悪いことも

 教えてくれた人たちを



 春が来る、青い青い春が来る

 戻らない時を思い出しながら

 今じゃなくてもいいこともしながら

 今日の風に吹かれに行くのさ



 今日はもっともっと伸びてやるのさ』





「サンキュー!!」



 今日も無事終了。

 作詞作曲、俺。歌は我らがボーカル様。

 嘘だ、実は幼馴染も詩の提供をしている。何度言っても全部俺が書いたことにしてほしいと言われるのだ。だから俺はよく奢る。一緒に飲むビールは美味い。酒好きな俺らはよく飲みよく食べ、そして歌う。でも俺は今日は酔えない。こいつに用事があるからだ。



「あ、おばさん最近畑やってるよ」


「あんなに腰痛い膝痛いって言ってたのに」


「すごい楽しそうでしたよ。うちも手伝ったよ。何個かタネ分けてもらってさ、出窓で育ててんの」


「お前、時々すげえ年寄りくさいよな」


「何さ、あんただってくしゃみオッサンじゃん」


「な!この曲聞いて惚れ直せよ!?」



 月に二、三度くらいのこの馬鹿騒ぎが本当に好きだ。地元に帰ったり、こいつが来たり。ギターを弾いて歌う、レパートリーはいっぱいある。お互いあまり歌は上手くはない。でも好きだ。

 今日のは初めて聞かせる曲。作詞作曲、俺。



「タイトルは?」


「い、今から言う!」





『プロポーズ』

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春はまだ青いか 新吉 @bottiti

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