第7話 冬はもう残って

 苦しい。


 雪がつもってる。寒い。

 寒いと息が苦しくなる。だから俺は冬が嫌いだ。あいつは冬が好きだ。花粉が飛ばないのと、編み物が好きだから。


 苦しいけど寒いとあいつを思い出す。







「ヒューヒューって言ってる」



 苦しいから。



「寒いの?これね、本当はね、お父さんに編んだんだけどね、もしよかったら使って」



 そういって紙袋から出てきた手編みのマフラー。すぐ巻いた、あったかい。



「はい!」



 自販機のコーンポタージュも買ってくれた。おこづかいいいなあ。



「ゆげ吸うと楽になるんでしょ?」



 うん。ちょっとマシになる。コーンが残る。ポンポンと底を叩きながら、いつもの帰り道を歩く。少し先を行って風よけしてくれる。手を引っぱられて進む。少し吹雪いてきた。



「寒いね」


「うん。でもマフラーあったかいよ」


「よかった!」



 嬉しそうに手を引かれる。


 ざくざく、しゃくしゃく。時々ヒューヒュー、自分の息。はあっと息を吐けば真っ白で、寒いなあとも思うけど、俺の中はあったかいんだとぼんやり思う。フタを開けた瞬間の鍋みたい。みんな体の中に鍋を持ってる。夏でも冬でも秋でも春でも。冬は外が寒くなるからこんなに自分が熱く感じるんだろうなあ。


 あいつは自分の家を通り過ぎて、俺の家に来る。ためらいもなくガチャっと開けておっきな声で言う。



「ほっさだよー!」


「え、大変!」



 バタバタと走ってきたお母さんは、あいつにお礼をしてる。


 俺からは

 ありがとうは明日言おう

 どうせ会うから


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