第6話 夏はもう苦くて
俺はこいつといるのが楽しい。ずっとそう思っていて、変わらないと思っている。だけど夏祭りで金魚すくいもやったし、チョコバナナもわたあめも焼き鳥も、ブルーハワイもこいつ以外と食ったことがある。もちろん女との話ね。
中3の夏、俺は兄貴の彼女と遊んだ。あわよくばと思っていた。カフェでアイスコーヒーを頼んだ。店員から勧められたのに砂糖とミルクを断った。失敗。
「ふふ、苦いでしょ?背伸びするからだよ」
彼女は自分のアイスティーの砂糖とミルクを入れてくれた。
なんだかとても恥ずかしかった。
俺がこの後チャラついた馬鹿男になったのはこの年上の彼女のせいだ。いろいろあって真面目な兄貴と揉めた。そして俺は荒れた。タバコに茶髪にピアスも開けた。女遊びもした。でもカッコつけのギターにここまでのめり込むことになるとは思ってなかった。そこだけは感謝。
今、上京してはじめての夏。俺は居酒屋でバイトしながら音楽を続けていた。
「生4つ!!!」
まだ生ビールの美味しさはわからない。苦くて、すぐ酔っちまう。こんな見た目で甘いカクテルが好きなんて言えないから、バイトやバンドメンバーとの飲みはいつも頑張って初めに頼む。イッキコールが怖い。でもだいたいむせて終了だ。俺が一番下っ端だからしょうがないんだ。夏祭りで居酒屋の外でも酒を売る。通りでは、カップルがいちゃつきながら舌の青さを見せ合っていた。
「青くなった!」
なにがそんなに嬉しいんだよ。
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