第4話 春はまだ青いか

 青春の1ページといってもいっぱいある。だから1ページ目が青い春の出来事とは限らない。青春を本にできたら日記のような詩のような、そんな一瞬の切り取りでつぎはぎだらけの本になるんだろう。


 あの頃感じていた甘いようで酸っぱくて、若くてかわいくて、苦いようで短くてさわやかな、それでいて濃厚で、かといってさらさらと流れて行く。そうは言ってもやっぱりとても長い間、いやいややっぱりあっという間で。青くて、蒼くて、煽って、アホくて、碧くて、葵、あおい。


 青春とは恋と挫折と夢と苦悩と希望に満ちている。何かがとても眩しくて眩しい。目も当てられないほどだ。だから理想と現実の差に落ち込む。でも必死に何かよくわからないものを追いかけている。振り返ってみれば笑えるのは、もう過去になっているからだ。自分の一部になったからだ。今が辛いのは今だからだ。未来が楽しみで怖いのは未来だからだ。




「空が青色なのは、落ち込んでいるときに一緒に溶けるためだと思う」



 顔も忘れたけれどいつかの美人の友だちの彼女は確かにそう言った。だから春の陽気の中、昼間から空を見上げて2人してメランコリックでメルヘンチック。じゃあ夕暮れが赤いのは?そう聞いたのは私だ。



「空が赤色なのは、いつまでも落ち込んでないでと励ましてくれてるからじゃないかな?」



 彼女は青空から戻ってきて笑う。

 でも私は違うと思う。

 より青春を青く感じるための、演出だ。

 彼の歌とおりだと思う。

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