6月19日② ※ネタバレ注意

 続き!

 ホントは前のと続きで書いてたんだけど、7000文字超えたからどこかで切らないとと思ってね!


 では、続きをどうぞ!!




 ※※※※


「アンタもこの子を殺そうとしてんのかい」

 婆様、焦っても無駄と思い、腕組みしたまま踏ん反り返る。


「……まァ、最終的にはね。邪魔だし。

 でも、まだかな。

 まだし。チビ過ぎて」

 真ボス、呆れたような顔で、主人公の横顔を一瞥する。

 身体が痺れさせられてるだけの主人公、口はきけないけど目だけで真ボスを見返す。


「…………?」

 婆様、真ボスの言葉に引っかかる。


「そう。出来損ないのコイツの代わりに、私が養育ロジックの創始者になってあげるの。

 こいつより素晴らしいロジックを発表してあげるわ。破綻なく完璧で非の打ち所がないものを」


 ニィっと唇の端を釣り上げて笑う真ボス。

 しかし、次の瞬間には、一点を真顔で見つめてブツブツ呟く。

「あの馬鹿どもが。私の論文の方が優れてるのにコイツの方が『優れてる』? どう見たって私の論文の方が素晴らしいのに……『そうじゃない』とか意味分からない事ばかり言って……私より出来が悪すぎて理解出来ないからって数で寄ってたかって……奴らのレベルまで思考力落として話してあげてるのに……これだから馬鹿な人間の集まりは……」


 そんな時、婆様突然笑い出す。

「この子が未来で発表する論文より、自分の論文が優れてる筈なのに評価されないから、60年前に来てこの子が発表する筈の論文の代わりに、自分の論文を出そうってのかい?

 ……呆れた。少しオツムが弱いのかい?」


 婆様のその言葉に引っかかり、突然眦まなじりを釣り上げる。

「なんだと?!」


 婆様、笑い顔のまま続ける。

「同じ分野として、アンタの論文がこの子のより優れてるのは『当たり前』じゃないかい。

 アンタ、この子より60使論文なんだろ?

 この子の論文が頭にある状態で自分の論文書いたんなら……優れてて当たり前じゃないか。

 この子の論文が素晴らしいと言われてるのは、破綻がないからとかそういった事じゃないんじゃないのかい?

『その時代でこの論文が発表出来た』という事が凄いのさ」


 婆様、最後に鋭く笑う。

「アンタに出来るのかい?

 60年後にはあるけど今にはない理論を使わずに、アンタの論文を発表する事が」


 真ボス、言葉に詰まる。


「それとも……使う理論全てについても全部論文書くのかい? 物凄い労力だねぇ。大変だ。まぁ、頑張るんだよ。

 ああ、言い忘れていた。

 アンタの時代は恐らく、男女がその能力を活かして効率的に動ける時代なんだろうけど、今は違うから気をつけなよ。

 男尊女卑がまだ無意識に人の中にある時代だからねぇ。特に学会なんて『学術分野は男の世界』とか思い込んでる頭の固い男の巣窟だ。セクハラ・パワハラ当たり前の世界で挫けずにね。

 アンタに言わせると『猿かと思う程の原始的な生活』の中でね。

 大変だねェ。今後暫くは『仕事もしつつ産めよ増やせよ』の地獄の時代さ。

 高度成長期の余韻に浸る、アンタの言う『老害』がまだ日本の大多数の中で、低賃金に喘ぎつつ2人以上の子供を持ち、上からも下からも圧力をかけられながら……ああ、想像しただけで恐ろしい。

 でも、この子はやってのけたんだ。

 さぞ頭のいいアンタには簡単なんだろうねぇ。

 頑張るんだよ。

 アンタがこの子の代わりに『養育ロジック』を成立させなきゃ、子守ナニーアンドロイドは生まれないんだから」


「お婆様……あまり挑発はしない方がよろしいかと……」

 婆様を見上げつつ言うアンドロイド。

「挑発なもんかい。この時代を知らなすぎるから、心配して応援してあげてるんだよ」


 今まで言葉が発せず歯ぎしりしていた真ボス。

「そんなのっ……お前ら老害が構築した世界だろうがっ!!」


「そうだよ。私ら世代が『良かれ』と構築した世界さ。《時代が合えば》成功する理論で構築された、ね。事実成功した。

 人は『成功体験』を忘れられない。今の時代に合わなくても、成功体験を追従すれば、また良くなると思って動く。

 本来は柔軟に変えていかなければならないけれど、今の私たち『老害』には、もう無理なのさ。

 この子(アンドロイド)に聞いたけど、私たち『老害』が死に絶える20年後辺りは地獄だそうじゃないか。人口そのものが恐ろしいまでに減り、世界からの圧力や攻撃を躱しつつ『日本』という国が破綻しないよう、耐えに耐える時代。

 アンタは……見たとこ20代半ばってとこかい?

 生まれるのは40年後か……その地獄を知らない世代だね。

 でも、この時代に残るなら、地獄時代の主戦力はアンタたちだよ」


 婆様、沈痛な面持ち。

 婆様自身、この時代と、そして今後来るであろう時代の事を考えて憂いてる。

 可愛がってる主人公たちが苦労しなければならない事を聞いたから。

 でも、自分だけの力では世間は変わらない事も、婆様は痛感している。


 その時、玄関から、先生・少年・幼馴染少女が駆け込んで来る。

 状況を見て驚愕。

 そして

「アンタっ……」

 幼馴染少女が目を見開く。

 真ボスの顔に見覚えがあったから。

 何を隠そう、幼馴染少女に裏切りを持ちかけたのは、真ボスだったから。


「どうしてっ……?!」

 真ボス、忌々しげに呟く。

 すると、ニヤリと笑う婆様。

 腕組みを外して裾から手を引き抜くと、手には携帯が。

「着物も便利なもんだろう?」

 着物の裾で隠しつつ、少年に電話して通話状態にしていた。


「さて。どうするんだい? 大人しく未来に帰るなら、このまま見逃してやるよ」

 婆様、鋭い顔でそう告げる。

 しかし、真ボスは笑う。

「この状況で、どうしてそんな強気に出れるのか……私の優位は変わってないのに。もうボケたの?」


 その瞬間、主人公が真ボスのナイフを持つ手を捻りあげる。

 堪らずナイフを落とし、床に崩れる真ボス。


「ほほほっ。健康の為に習ってた合気道がこんな所で役に立つなんてね」

 婆様、渾身のウィンク(誰得


「婆ちゃんに……合気道の基本……教えて貰ってて良かった……」

 まだ呂律の回らない口でなんとか喋る主人公。


「なんでっ……」

 動けない筈の主人公に驚く真ボス。


「婆ちゃんが……時間稼ぎ……しててくれたお陰で……動けるようになった……」

「時間稼ぎだったんですか。私はてっきり嫌味を言ってるだけなのだと」

「一石二鳥……いや三鳥かね。時間稼いであの子が動けるように待つ事と、応援が到着するのを待つのと……言いたい事言う。まァ、時間稼げりゃ何でも良かったんだけど、思わずカチンときちまってね」

「婆ちゃんエグい……」


 身体を震わせて耐える主人公の代わりに、先生が真ボスを抑え込む。

 腕を捻り上げられて、床に這いつくばる真ボス。

「こんなところでっ……たかが…っ……ボイスチェンジャーをつけ忘れただけでっ……」

 床に爪を立てながら悔しがる真ボス。


 そこで呆れた声を出したのは幼馴染少女。

「まだ分かってないの? 正体隠したままでいれたって、そのうち破綻してた事」


 勝手知ったる主人公の家の棚を開け、ガムテープを取り出す幼馴染少女。

「自分の時代で認められなかったからって過去に逃げてきたアンタなんかに、この子と同じ事が出来るわけないじゃない」


 少年、すかさず倒れた真ボスの足を抑えにかかる。そして、その隙に足をガムテープでぐるぐる巻きにする幼馴染少女。


「アンタの敗因は、時代考察が甘すぎた事。

 自分が安穏と暮らす60年後の全てが、それまでの時代を生きた人達が、知恵を振り絞って取捨選択し少しずつ構築されてきたものだって事を、アンタは少しも考えた事もなかったんだろ。

 60年前に戻るって事は、その恩恵を全て自ら捨て去る事だよ。

 過去の論文と張り合わずに、それを糧にして未来に向かって新しい物を生み出せるように努力すれば良かったのに。

 まさに、『温故知新』さ」


 後ろ手にガムテープでぐるぐる巻きにされる真ボスを見下げながら、ある意味憐れみながら言う婆様。


 全員が真ボスを見下ろす中、彼女は哄笑する。


「どのみち未来には帰れない! もうタイムリープ装置はないからな! お前たちは! 今後死ぬまで! 私の陰に怯えながら生きるんだ!」


「そんな事はさせません」


 ヒゲゴリマッチョ、かろうじて動く腕で自分の体についてる蓋を開けると、中から機械を取り出す。

 それを少し弄ると、ジリジリと真ボスににじり寄る。


「それはっ……やめろ!!」


 真ボス、身体をウゴウゴさせて逃げようとするが出来ず。


「そんなに過去で英知を振るいたいのであれば、どうぞ存分に発揮してきて下さい」


 そう言い、ヒゲゴリマッチョ は機械を起動させて真ボスの懐にねじ込む。


 何やら喚く真ボスは、発生した光に包まれ、そして消える。


「……いつに、飛ばしたんですか?」

 ボソリと呟く先生。

「貞享2年。西暦で言うところの1685年。生類憐れみの令が発令されてた頃合いですね」

「エグい……」

「未来に返せばまた来ます。なら、どうあがいても技術的に不可能な時代の方が良いかと。あのタイムリープ装置はこれでエネルギーが切れますし。しかし、言葉が通じない程昔では可哀想なので」

「何その微妙な優しさ」

 幼馴染少女がつっこむ。


「しかし……まさかお姉ちゃんに成りすましていたなんて……違和感はあったけど、想像もしてなかったわ……」

 婆様、疲れた様子で近くの椅子に座る。


「変だとは……思っていたのよね。妙に〇〇(主人公)とよそよそしいから。いつもなら、恋人かってぐらいベタベタしてたのに」

 幼馴染少女も婆様に同意する。

「知らなかったのか?」

 幼馴染少女に尋ねる少年。

「勿論。スパイは自分だけだと思ってたよ。まさか……〇〇(主人公)に成りすます為に、ずっと正体隠して潜入してたなんて」

 はぁ、とため息をつく婆様。

「ホントにこれで最後かね……先生、アンタは本物かい?」

「なんて事言うんですかっ! ほっ……本物ですよ?!」

 ワタワタ否定する先生。

 それにより、緊迫した空気がやっと弛緩する。


「これで、やっと終わったんだ……」

 床に座り込んだ主人公。

 そう、ポツリと呟いた。




 ※※※※


 こんな感じィー?!


 なんか、真ボスを過去に送り込む所だけが妙にアッサリしてるけど、まぁそこは実際に書く時に煮詰めましょう。


 今日は更に続くよ!


 なんで今日に限ってこんなに書けるのかって?!


 午前中仕事サボったからだよ!

(※整形外科通院の為午前中休みとったから)


 では、続く!!

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