明日のサラダは袋の中で

 月とか火星とか、地球以外の天体で生活するには、何が必要でしょう? 

 まずは空気と水ですね。特に水は必要不可欠なので、月でも火星でも血眼……は言い過ぎかも知れませんが、必死になって探しています。


 では、水も空気もなんとかなって、さて、人間を移住させようとなると、やはり食べものですね。折角、コロニーを作ったのに食べるものがなくて餓死しちゃった、なんて笑い話にもなりません。

 映画化もされたSF「火星の人」(映画のタイトルは「オデッセイ」)では、マット・デイモンが火星上でジャガイモを作っていました。では、月でも同じように芋を育てることができるかというと、これがなかなか難しい。というのも、いわゆる月の砂は、レゴリスと呼ばれる微粒子で、地上のように風雨に晒されることがないため、尖った形状をしています。そのため、レゴリスが機器の中に入り込むと、不具合の原因になります。実際に、アポロではレゴリスによってトラブルが引き起こされています。レゴリスを月面基地の建材に用いるというアイディアが検討されていますが、農耕に使うとしたらなんらかの加工が必要となるでしょうね。


 そこで考えられているのが、袋の中で植物を培養する方法です。「袋型培養槽技術」などと呼ばれています。この方法では、密閉したビニール袋の中で植物を増殖させるので、雑菌の混入を防ぐウィルスフリーことができ、臭いの発生もありません。また、培養設備も簡単でメンテナンスも容易、居住する人数に合わせて数量の調節も簡単という優れた特徴を持っています。

 JAXAと竹中工務店、キリン、千葉大、東京理科大は、2021年8月~10月にかけて国際宇宙ステーションISSにおいて、袋型培養槽技術によるレタスの培養実験を行いました。レタスは微小重力下でもきちんと生育し収穫されたそうです。これで、月面に袋培養農場ができる可能性が高まったと言えます。

 食品衛生上の確認はこれからだそうですが、なによりおいしいのか? が気になりますね。そのうち、ISS産サラダの試食会とか、やってくれませんかね。

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