ロケットとミサイル
近年、ニュースで「飛翔体」という言葉を耳にするようになりました。「飛翔体」とは、ぶっちゃけると「飛んでいるものすべて」ということになります。従って、砲弾だろうがミサイルだろうがロケットだろうが飛行機だろうがスーパーマンだろうが、飛んでいれば「飛翔体」と呼ばれるのです。そうはいっても、鳥を指して飛翔体と言うことはあまりありません。現状、ロケットかミサイルか分からないけれど飛んでいるもの、ということになります。
さて、一時期話題になったのが、北の某国が飛ばしたアレはロケットなのかミサイルなのかということ。みなさんはロケットとミサイルの違い、説明できますか?
そもそも「ロケット」とは何かといえば、搭載した燃料を燃焼させるなどして放出することで推力を得るメカニズムであり、推進方法を表した言葉と言えます。ですから、いわゆるロケットの機体は、本来「ロケットエンジンによって推力をえる飛翔体」と呼ぶべきなのです。慣例的にロケットエンジンを使用した飛翔体を、ロケットと呼んでしまっていることが、混乱の元と言えるでしょう。いや、そもそも最初の実用的ロケットがドイツが第二次世界大戦で使った「V2ロケット」なので、ロケットエンジンとロケット、ミサイルがごっちゃになっても不思議はないのかも。
以前のコラム、「補助ロケットの話をしよう(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054887375033)」でも少し触れていますが、ロケットには固体燃料を使った固体ロケットと、液体燃料を使った液体ロケットがあります。どちらも化学反応を利用して推進力を得ています。40年前くらいの子供向け雑誌では、原子力(核)を使った「原子力ロケット」なんていうのも登場していましたが、現在のところ実現していませんし、将来も実現しないでしょうね、大気圏内では。あとは、レーザー推進もありますね。こちらは宇宙エレベーター(軌道エレベーター)で使われる可能性が高いと言われていますが、まだ研究段階です。あ、宇宙エレベーターについては書いていましたっけ? そのうち書かないとなぁ。
さて、ロケットが推進方法およびロケット推進を用いた機体の名称ということになると、もう一方のミサイルはどうなのか。ミサイルの場合、推進方法にこだわりません。ですから、巡航ミサイルのようにジェットエンジンを用いたものも、ミサイルと呼ばれるのです。
また、ロケットとミサイルではそもそも目的が違います。ロケット(宇宙ロケットとか輸送ロケットとか)は、宇宙に到達することが目的で、そのために推力や機体の制御を行います。しかし、ミサイルは指定した場所に到達させることが目的で、そのための誘導装置が必要です。
では、ロケット技術はミサイルに転用可能なのかどうかといえば、できないことはないでしょう。逆のパターンとしては、ロシアはミサイルをロケットに転用していますし。だからといって、たとえばイプシロンを弾道ミサイルとして攻撃に使えるかといえば、ちょっと現実的ではありません。兵器として開発されたミサイルがすでにあるのですから、それを利用した方がいいに決まっています。
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