プリンターの話(4)

 いま現在、プリンターの主流といえる方式が、インクジェットプリンターです。液体のインクを飛ばし、紙に定着させる方式で、圧電素子(ピエゾ素子)による振動を利用してインクを飛ばす「ピエゾ方式」(エプソン)、熱で作った泡によってインクを押し出す「サーマル方式」(キヤノン、HPなど)の二種類があります。キヤノンは、自社のサーマル方式を「バブルジェット方式」と呼んでいます。

 ピエゾ方式のメリットは、電圧によって液滴量を容易に制御できる点です。簡単に言えば、同じノズルから小さな点も大きな点も印刷できることになります。また、顔料系塗料も使えます。一方、サーマル方式は、構造がシンプルであり、また印刷の高速化できる点が大きなメリットです。近年では平面以外にも印刷する技術が開発され、卵の消費期限を印刷するのにもインクジェットプリンターが使われています。インクジェットプリンターを使って、血管とか内蔵のような生体器官を作るという研究もありました。


 インクジェットプリンターでは、ヘッドから飛ばすインクを小さくすれば、それだけ高精細な印刷が可能になるため、一時期、各メーカーが競争のようになっていましたが、現在は頭打ちになっています。

 インクジェットは液体のインクを使うため、紙に印刷すると繊維の中にインクが染みこみ、いわゆる“にじみ”が発生します。顔料系塗料はにじみが少ないと言われますが、染料系塗料に比較しての話です。メーカーは、印刷時のにじみを少なくするために、にじみ難いインクを開発したり、染み込まないように紙の表面をコーティングした専用紙を用意したりしています。また、水に濡れると滲む、使っていないとヘッドが目詰まりしやすいなどの欠点も。


 近年では、プリンター本体の価格を抑え、インクカートリッジなどの消耗品で利益を出すというビジネスモデルになっています。そのため、安価な互換カートリッジも登場していますが、互換カートリッジはトラブルを誘発する可能性が高くなりますし、カートリッジが売れないと、その分価格に反映させなければならないという悪循環に陥ります。そんな中生まれたのが、エプソンのエコタンク方式です。タンク方式については、別の機会に書きたいと思います。


 次回は、レーザープリンターについて。

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