iPS細胞の“i”はなぜ小文字なのか?

 先日、パーキンソン病に対するiPS細胞を利用した治験が告知されました。パーキンソン病は、脳内でドーパミンを作り出す細胞が変異してしまうことで引き起こされる病気ですが、iPS細胞を使ってドーパミンを作り出す細胞を生成し、被験者の脳内に移植する方法で症状を軽減させようというものです。すでにラットでの試験では、二年経過して問題はないと確認されているそうです。


 iPS細胞を簡単に説明すると、人体から取り出した細胞に対して、山中ファクターと呼ばれる四種類の遺伝子を加えることで、細胞を初期化した細胞のことで、初期化した細胞は、脳細胞や神経細胞など様々な細胞に分化させることができます。


 本来、被験者本人の細胞からiPS細胞を作ることで、免疫不全を防ぐことができます。しかし、この方法だと時間もコストも掛かってしまいます。そこで、京都大学iPS細胞研究所(CiRAサイラ)では、「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」を進めています。このプロジェクトでは、iPS細胞をヒト白血球型抗原(HLA)の型ごとに分類して保存し、使用する際にはもっとも免疫が起きにくい組み合わせを作り出します。こうすれば、費用も時間もかなり抑えることができるはずです。以前、山中教授の講演を聴く機会があって、そこでもストックプロジェクトの話をされていましたが、何人かに一人は免疫不全を起こしにくい型を持った人がいるそうです。

 もし、将来、ストックプロジェクトが上手くいけば、献血のようにiPS細胞を提供するしくみが出来るのかも知れませんね。


 さて、iPS細胞は「人工多能性幹細胞」を意味する英語“induced pluripotent stem cells”の頭文字を取ったものですが、なぜ先頭のiが小文字なのでしょうか? それは、iPadやiPhoneのように広く世界に普及して欲しいという山中教授の思いから小文字になっているのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る