第4話男達の作戦会議
北学園…優(すぐる)たちが通う学校であり、生徒数は県でも1.2を争うマンモス校である。また、この学校は完全実力性であることも有名であり、優たちが所属するAクラスは、いわゆるサードクラス、学力的に上から3番目のクラスである。
毎年1万人を超える受験者の中から、1学年2千人、全14クラスからなっている。上のクラスからX、Y、A~Lとなっており、上の3つのクラスは特に選抜クラスと呼ばれている。
この序列が原因で、差別問題などが起きているのも現実である。
─────────────────────────
バスで揺られること約1時間、市が運営する宿泊学習施設に到着する。
「よーっしゃ、お前ら、はやく降りて点呼だぞー」
担任の森本のやる気のない声…
ところで森本といえば、入学式の日に携帯でゲームアプリをしている男子をホームルームの後に集めたのは覚えているだろうか?
バスの中で聞こえた噂によると、パ〇ドラやモン〇トなどのIDを聞き出していたらしい。
そんな教師いねぇよ!人事部仕事しろよ!
という言葉をぐっと堪えた俺だったが、森本もはやく生徒と打ち解けたい気持ちがあったのかもしれない…
だよな…?そう信じさせてくれぇ…
点呼も終わり、本格的に集団行動や声出しなどの練習が始まった。
正直、予想よりもきつかった。
昼休み、同じクラスの男子と自己紹介なんてしながら食事をしていると、あのうるせー谷口が話しかけてきた
「なあなあ、北野!体育教師まじ理不尽じゃね?なんだよあいつら、号令で声出す前から『声出せお前ら!』とか言ってるんだぜ?頭いってんだろ」
おいおい、言い過ぎってか、お前もだいぶん特殊という観点からは頭いってるぞ?
「まあ、そうだな。あれがあの人達の仕事だからな」
「仕事ならしょうがないよな!そう思うと体育教師ほど楽な仕事はないよな。だって人に偉そうにしてるだけで金貰ってるんだぜ?」
「谷口、世の中には損する人と得する人がいるんだ。神様ってのは人間を平等にお作りなさった訳じゃ無いらしいぞ。これから社会にでたらこんなの日常茶飯事だ。今のうちに慣れておかないとな」
と、すこしありがたいお話を聞かせてあげた。
だが谷口は、「はーん」とか「そっか」とか言いたげな、どこかどうでもいい話を聞いているかのように、俺の話を聞いている。
てか、聞いてないだろこいつ、なめとんか?
谷口のこの態度が素であるならば憎めないやつだが、意図的にこの態度をとっているのなら谷口って奴は本当に恐ろしい奴だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
北学園のふれあい研修という名の体育教師からの一方的言葉責めに耐えた新一年生たちは、大して美味しくも無い晩飯を食べた後、部屋に戻った。
部屋割りは1クラス1部屋らしく、比較的大きな部屋だった。
「おっしゃ!ここ俺のベットー!」
「じゃあ、俺はここだ!」
こんなかんじでベット割が進む中、やはりクラスの目立つ連中は固まっていき、俺もその目立つ連中の陣地にベットをとった。
これは夜に備えるためである。合宿の夜といえば当然、「あれ」が行われるからだ。
ここでクラスの中心層の動きを読んでおく必要がある。
しばらくゆっくりした後、クラス毎でお風呂へ入り、別館でホームルームが行われた。
その帰り道、中学時代水泳でしのぎを削り合った安藤に声を掛けられた
「お風呂上がりの女子ってなんかよかったよな〜。なんとも言えない魅力があってさ〜。」
「安藤とは気が合うな。俺もそう思ってたんだよ。」
お風呂が終わってからのホームルームだったので当然、女子のお風呂上がりの姿を見れる訳だ。
お風呂上がりの女子は顔が少し火照っており、寝間着に身を包んだその姿は人間を超越した、ただの男性理性破壊装置と化していた。
俺は心底、ホームルーム中に男共の理性が破壊されなったことにほっとしている。
大多数の男子が春香(はるか)に視線を注ぐ中、俺の視線は橘へと向かっていた。普段はセミロングだがお風呂上がりの橘はポニーテールにしており、少し湿った髪の毛がさらなる色気を醸し出していた。
橘とすれ違う時、
「おやすみ、北野くん」
と話しかけられたが、橘から香る、柑橘系のシャンプーの香りに呑まれてしまい、返事をし損ねてしまった。
くっそ、これだから童貞は嫌になるぜ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1日目のすべての日程が終わり就寝時間となった。
男子の中心メンバーが陣取る付近では、恋バナという名の女子争奪のための作戦会議が始まった!
まずは、男子の中心メンバーである、唐島、田島、戸崎、俺のメンツで、クラスの男子に気になっている人を聞いて回る。
以外とこういうことには谷口は首を突っ込んでこないらしい。
クラスの男子の意見を聞いていくと、やはりというべきか春香と橘の2強だった。
元気で可憐で人当たりのいい春香か、どこか話しかけ難いが必殺、「童貞殺しスマイル」を持ち、とにかく可愛い橘か、と言ったところだろう。
まあ俺は「童貞殺しスマイル」にやられたんですけどね!
しょうがないよね!だって童貞だもん!
その後消灯時間も過ぎ、近くで寝る場所を陣取っていた男子の中心メンバーでの会話が始まった。
まず、田島と戸崎は、春香推しらしい。
「お前と倉敷さん、どんな関係なんだ!?」
とか聞かれたが、いつもの定型文で返しておいた。
春香の中学時代のことは、もちろん伏せておいた。
だって、ところ構わず付き合ってたなんて言ったら2人の夢が壊れちゃうじゃん!
あと、俺が春香と付き合うことはありえないともちゃんといっておいた。
唐島はというと…
女子の中心メンバーであり、意外と男子人気の多かったダークホース、恭賀崎だった。
ルックス、スタイルともに抜群だが、性格がきつくわがまま、傲慢であり、どちらかというと女王様タイプの女子だ。
唐島は、「あの人に踏まれたい!」とか言ってたのでみんなで無視してあげておいた。
まあ、気持ちはわかるんですけどね!!!
そしてもう1人、中心メンバーにいたのが佐野良樹(さのよしき)という口数の少ない奴がいた。
佐野は、とにかくかっこよく、男子からも女子からも一目置かれていた。
俺は佐野に聞いた
「佐野は好きな人いないの?」
「俺は…橘さんかな…」
ん?おいおい、終戦フラグかよ
俺がこんなイケメンに勝てる訳ないじゃん
だがまだあきらめるな、優!
得意のトークで佐野に勝つんだ!
唐島達から、「北野はいないの?」と聞かれたが、佐野に危機感を持たせたくなかったので「俺はまだわかんないな」と適当に流しておいた。
と佐野が
「橘さんに振り向いてもらうために、まずは今度ある中間考査で高順位狙っていくわ」
といった。
確かに、北学園では順位を貼り出すとも聞くしこれは最初のアピールチャンスだ!
だが佐野、残念だったな。俺は中学で春香意外に負けたことがないんだよ!
まずは、中間考査で佐野に一歩リードしてやる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます