第2話 ようこそ1年A組へ
本編に入る前に俺の幼馴染、倉敷春香(くらしきはるか)についてもう少し語っておきたいと思う。
春香は中学時代、学校で1番モテていた、といっても過言ではないほどのモテぶりであった。そんな彼女に彼氏がいないわけもないのだが、、、
ないのだが、だ。今まで彼氏の最長持続記録は何と1ヶ月である。、、、あれ?そんなにすごくない?
が、それよりもすごいのが最短記録である。なんと授業1コマ分なのだ。彼女曰く、「なんか、授業中に新しい彼氏のこと考えてたら、なんか違うなーって思っちゃって、別れて楽になろうって結果の話だよー。」
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あーあ、神様って意地悪だな〜。
だいたいなんなんだよ、結果って!過程も大事にしてよ〜(泣)ちなみに家庭は大事にしなければいけない。育児放棄ダメ!絶対!
そんなこんなで1年A組の教室までやってきた。
「ここが俺が1年間暮らす教室かー、、、。俺の青春はここから始まるっ!」
なんて厨二臭いことを言っていると
「優(すぐる)ってほんとにアニメの観過ぎじゃない?そんなんじゃ友達すら出来ないよ?」
「春香さんよ、アニメ観過ぎってのは特大ブーメランだぜ?ま、とにかく中に入らないことには始まんないし、早く入ろうぜ。」
「アニメ観過ぎって誰のせいだか、、、。」
そうして1年A組の扉を開け、黒板に書かれてある出席番号に従って自分の席に着いてみた。
そして、クラスの様子を自分の席から眺めてみる。
、、、ん?
あれ?
なんだなんだなんだ!?
なんでこんな静かなんだ!?!?
クラスの中は嵐の前の静けさのようにしずまりかえっていた。
それもそのはず。ここのクラスにいるのは大抵公立高校に落ちて、ここ北学園へ進学したものが大半を占めるため、比較的中学校が違うもの同士が多いのだ。
…あれ、待てよ、嵐の前の静けさってことは当然嵐があるってことで、、、
なんだよこの分かりやすいフラグは…!
そう思った矢先、教室の前のドアが勢いよく開け放たれる!
「ちょりーーっす!!!灘(なだ)中出身の谷口でっす!みんな1年間よろしくよろしくーーー!」
な、なんなんだコイツは!?
お前絶対黙ってればかっこいいよ、必要最低限の10倍くらいの声出してんじゃねーよ。
あ、分かっちゃった分かっちゃったよ俺。
こいつは入学式の朝に大きな声を出すことによって必然的、絶対的にクラスの中心になろうとしてやがるな!!!
すると出席番号的に後ろの席の春香が、
「中学の時まではああいう奴が面白くて好きだったけど、なんかもう、ああいうタイプはいいや。なんかうるさくてイライラが溜まっていくだけなんだけど。」
と、春香は苦笑まじりで俺に言う。
「俺もああいう奴とは、もともと馬が合いそうにもないし、極力避けていきたいな…。」
そんなこんなで後ろの席の春香と話をしていると、担任であろうと思しき教師が教室に入ってきた。
「みんないるかー?ま、いねーならいねーで問題は無いんだけどなー…や、まて問題はあるか、うん、問題はあるな。ま、ようするにいない奴探すのは面倒いって事だな、うん。」
え、なにこの教師。自己完結してるんだが。
ってか全員揃ってないとダメだろ!なんでこいつが教師やれてんだよ、しっかりしてくれよ学校の人事部さんよーーー…。
「うん、ちゃんと数えたぞ、全員いるな!よっし、みんなおはよう!ようこそ、北学園へ!俺がこの1年A組の担任となった森本だ!担当教科は数学だ!」
と一度気を取り直し、少しは教師らしくなった森本である。
って、もう担任のこと心の中で呼び捨てかよ!
人って第一印象が大事なんだな!
「さっそくだが、来週から君たち1年生には新入生ふれあい合宿というものに参加してもらう!体育科の先生から集団行動などの指導を受ける、北学園の伝統行事だ!」
ふれあい合宿かー……ところで、ふれあい合宿ってなんか意味深だよね。言い換えてみると、触れ合う合宿だぜ???
え、分かんないって?そ、そすか、なんかすみませんっ!
「ここで、俺が言っときたいのは、伝統行事とかいいながら、どこの高校もやってるってことだな。伝統とか軽々しく付けたがるんじゃねーっつんだよ。ふざけやがって。」
こらこら、森本先生?本音出しすぎじゃないっすか?
そんなんじゃ、ボーナスもらえないぞ?
その後森本から色々な諸連絡があり…
「ほんじゃ、とりあえず最初のホームルームは終わりにすっかな。てきとーに解散してくれー!あ、あと男子でスマホゲームをやってる奴は今から俺のところに全員来てくれ。」
え、謎の招集だな!ま、俺は携帯はゲームなんかやってないから関係無いけど。
え?携帯って家じゃないところでアニメとかネットサーフィンするためにあるものだよね???
ゲームはやっぱり大画面でしなきゃね!
「ねね優、今日は一緒に帰るよね?確か優のお母さん今日いないし春香のとこもいないから晩飯、陽(はる)ちゃんの分まで作りに優の家に行く日だったと思うんだけど。」
陽ちゃんとは俺の妹、北野陽(きたのはる)中学2年生のことである。誰に似たのか中学生とは思えない顔立ちをした少々兄には手厳しい我が妹である。
「ああ、そういやそうだったな。んなら、帰りにそのままスーパーいって晩飯の材料買って帰るか。」
「んー、了解了解〜。」
そんな慣れたやり取りをしながら帰り支度をしていると、
「お、優じゃん!久しぶり!春香ちゃんもおひさ!」
そうやって声をかけてきたのは、中学の時に何度も水泳部で対戦した、隣の中学校だった安藤だった。
「おー!安藤君久しぶり!同じ高校だったんだ!よろしくねー!」
春香がなぜ知り合いなのかというと、彼女は中学の時、その水泳部のマネージャーをやっていたからである。
「同じ高校とは知らなかったぜ、安藤!とりあえず1年間よろしく!」
「2人ともよろしく。優とはもう勝負できないのは残念だけど同じクラスならそんなに寂しくないな。」
そう、俺は中学3年生の時、最後の大会となった全国大会予選で肘の怪我を押し切って出場したことで怪我を悪化させてしまい、選手生命を絶たれてしまったのだ。
「俺も残念に思うよ…。でも安藤、高校では俺の分まで全国目指してがんばってくれ!応援してるから。」
そんなこんなで、安藤ともう少し話をした後で学校を出た。
その帰り道、春香とスーパーを目指して歩いている途中、
「あ、そういえば優、いい娘見つかった?」
「え、なにが?いい娘って何のことだよ。」
春香が何を言っているのかわからないままに聞き返すと、
「優が、高校デビューするために彼女絶対に作るって春香に宣言してきたんじゃん。」
ムムム?
ナ、ナンダッテ?
カ、カノジョ?
コ、コウコウデビュー?
完全に忘れていた、森本のキャラが強すぎたのが原因に違いない、クソ、森本め!
というか何で忘れてたんだ俺!
俺は彼女が欲しいんだった!
ふれ合い合宿…… あ、間違えた、触れ合い合宿で必ず彼女候補を見つけて、彼女をつくってやる!
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