愛は義務より良い教師である。ⅩⅩⅦ

「もう、出るから」


 気持ち悪い裏声でそう言ってその場から離れようとする。


「えぇ~もう出ちゃうの? 今入ったばかりだよ? ほら、せっかくの修学旅行の露天風呂なんだからもう少し入ろうよ」


 委員長はそう言って掴んだ腕を自分の方にぐいっと引いて僕を引き戻そうとする。


 刹那、勢い余った委員長の力に僕は一気に引き寄せられて、僕の顔面にとても柔らかい二つの壁、というか山? がぽよよんと当たった。


「ひゃん!?」


 僕の顔面が突然当たって驚いた委員長は色っぽい声を出して仰け反った。


 その仰け反りの反動で僕は反対に飛ばされて背中から、露天に沈んだ。


 もやし体型はこういう時、本当によく吹っ飛ぶんだ。


 尻が地についてない状態で浮かぶ僕はばしゃばしゃと必至にもがく。


「だ、大丈夫!?」


 そんな僕を見て委員長は慌てて僕に手を差し出そうとする。


 もにゅ。


 おそらく効果音にしたらそんな音がするであろうそんな何かを僕は掴んでいた。


「あぁ、ダメぇ……」


 顔が浮き沈みする中、委員長のそんな弱弱しい声が聞こえる。


 そこでようやく地に足がついて体勢を安定させて、目の前を確認した。


 湯気ではっきりとは見えないが、こんだけの至近距離であるため、その存在は確認が出来る。


「あ、あわわわわわ……」


 眼前に広がる委員長の圧倒的大迫力のEカップおっぱいが僕の手に余るくらいはみ出して圧倒的存在感を示していた。


「ご、ごめん!! 委員長!」


 思わず、素の声が出てしまう。


「えっ? その声、目島君?」


 やっば!! 目の前であんな刺激的なもの見せられて、声が出てしまった。


「違うよ? 誰それ?」


 再び裏声を使って必至に誤魔化す。


「でも今確かに目島君の声が聞こえたんだけどな」


 そう言って委員長は湯気で見えない僕に近づいてう~んと凝視する。


 こんだけびしょびしょなら冷汗とか分からないけど、顔にかいた汗が止まらない。


「って目島君がこんなところにいるわけないか。はははっ」


 陽気に笑って委員長は肩まで湯に浸かった。


「まぁ、目島君なら……見られてもいいかな?」


 湯気でどこを向いているか分からないがぼそっと委員長は呟いた。


「何てね。私何言ってるんだろうね! ははははは」


「……」


 僕の顔は真っ赤だ。


 露天に入ってるからではない。


 委員長の本音を聞いてしまったから。


 僕だったら見られてもいい。


 それって……つまり。


「委員長おっぱい大き~い」


「木下さん。それに冷百合さんと毒ヶ杜さんも」


「ねぇねぇ。何カップあんの? すみれ。委員長のおっぱい超大きいよね?」


「ふん。大きいから何よ。そんなの動きにくいし、邪魔だし、男子の視線がうざいだけじゃん」


ひがむなひがむな」


「きぃ~!! どうせ私はこの中で一番小さいですよ。悪かったわね!!」


「はははっ。すみれが怒った~」


「でも、桃園さんの胸、大きいだけじゃなくて形も綺麗」


「いやいや、毒ヶ杜さんには負けるよ。はははっ」


「で、何カップなの? 委員長」


「はははっ。あっ、そうだ。この子も話に混ぜてあげて。一緒に入ってたの……あれ?」


「どうしたの?桃園さん」




「いない。確かにここにいたのに」

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