愛は義務より良い教師である。ⅩⅩⅢ
***
「やあやあ、目島君。毒ヶ杜さん達もお揃いで」
言って委員長は右手を上に上げて、選手宣誓みたいな格好をした。
ラーメンを食べ終えた僕達は残りの二時間を使って、二日目の宿泊施設に辿りついた。
これで本当に修学旅行の自由時間のネタ話が完成してしまった。
まぁ、これはこれでいい思い出か。よしとしよう。
「目島君達でうちのクラスは最後だよ。おかえりなさい」
にこっと笑って委員長は施設のフロントで出迎えてくれた。
「戻ったら、各自自分の部屋を確認して向かって。荷物は既に部屋にあるから」
は~いと小学生みたいな返事をして僕達は奥に進む。
「委員長」
「どうしたの? 目島君」
他のみんながぞろぞろ階段を上っていく中、僕はどうしても気になって委員長に声をかけた。
「その服。僕がプレゼントした……」
「へへっ。気づいた?」
委員長が着ていた服は一緒に買い物に言った時に僕がプレゼントした桜色や黄緑を基調としたゆるふわコーデの服だった。
「うん。やっぱり凄く似合ってるよ」
「ありがとう」
何かプレゼントした物を着てくれるのは嬉しいな。
「目島君。何してるの?」
「毒ヶ杜さん。先に行ったんじゃなかったの?」
僕の真後ろに音もなく、毒ヶ杜さんが立っていた。
「目島君が遅いから向かいに来てあげたんだよ。ほら、早く行こう」
言って毒ヶ杜さんは手を僕に差し出した。
「う、うん」
あれ? 何だろう。毒ヶ杜さんから嫌な気配を感じる。目が笑ってない。
「桃園さん。私達もう行くから、また後でね」
「じゃあね。委員長」
ここは毒ヶ杜さんに従っておこう。
「……うん。また後で」
委員長の元を後にして僕と僕と毒ヶ杜さんは階段を上る。
委員長が見えなくなって、一階と二階の間に到達した途端、僕の前を歩く毒ヶ杜さんがこちらに向き返してきた。
「目島君」
言って突然僕の首裏に両手を回して、抱きついた。
「ど、毒ヶ杜さ……!?」
その動作から自然な流れで僕の唇にキスをした。
毒ヶ杜さんの暖かい感触を感じる。
「!?」
今回は不意ではあるが、二回目のキス。しかし、前回はなかったステップアップが僕に訪れ動揺する。
あろうことか毒ヶ杜さんは僕の口内に勢いよく、舌を入れてきた。
ちょっ!? これは初めてでどうすればいいか分からない!!
自分の口内で暴れまわる毒ヶ杜さんの舌に動揺しながら、なす術なくされるがままになる。
何か、執拗に舌を舌で絡んでくるんだけど何々!? どういう事なのこれ!!
訳が分からなくなり、混乱して僕は毒ヶ杜さんの両肩に自分の両手を添えて、顔を離した。
くちゅっといやらしい音を立てて、僕らの唇は離れた。
「んはっ」
色っぽい吐息を立てて離れた毒ヶ杜さんと僕の間につぅーと一本の糸が引く。
「いきなりどうしたの!? 毒ヶ杜さん」
両手を添えたまま毒ヶ杜さんの顔を見て聞いた。
「……目島君。目島君が今見てるのは、誰?」
質問と全く関係ないレスポンスが返ってくる。
「えっ、誰って毒ヶ杜さんでしょ」
「ふふっ。じゃあ今、キスしたのは?」
「ど、毒ヶ杜さん」
まっすぐ僕の顔を見ながら、聞いてくるから少し気恥ずかしくなる。
「ふふっ」
そう笑って毒ヶ杜さんは僕の胸板に顔を横向きにして置いて、ぎゅっと抱きしめた。
さっきまでの嫌な感じは消えていて、何だか物凄くリラックスしている。
「……今のは、何の確認なの?」
分からず聞くと、
「いいの。……ほら、目島君もぎゅっとして?」
こんな階段の真ん中でこんな事して、委員長だってまだ下にしかもすぐ近くにいるのに。
しかし、僕はそれに答えて毒ヶ杜さんを抱いた。
「目島君は私の事好き?」
「好きだよ」
ここだけは即答できる。自信がある。
「ふふっ。私も好きだよ」
そう言った毒ヶ杜さんは下の階をチラッと見て、不敵に笑った。
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