人が恋に落ちるのは、万有引力のせいではない。ⅩⅨ
***
「あっこれ可愛い!!」
そう言って委員長は目の前の大量にハンガー掛けされた服の集団からそれを引っ張り出して目島君これどうかな? と僕に聞いてくる。
「うん。委員長にお似合いだと思う」
感想を述べて僕は、息を吐いて肩の力を落とす。
(うわああああああ!! デートやばい!! えっ何々? 聞いてきたって事はこれ買ってあげればいいの? 分かんないよぉぉぉぉぉぉ!!)
初のデートに大混戦の僕は、気を張りすぎて空回りしていた。
(とりあえず、冷静装っているから実はテンぱってるって事悟られてはないだろう)
息を大きく吸って、目の前に集中する。
やばい。デート舐めてた。今こうして現在進行形で体感して体験しているから分かる。
デートと分かった時点で下調べするべきだった。
委員長とデート、それにばかり目が行き過ぎて、中身・内容を全く考えてなかった。
どうしよう。……どうすればいい? 誰か助けて。
僕と委員長は現在、駅近くの服屋に来ている。
何でも委員長が修学旅行に着ていく新しい服が欲しいとの事でだ。
「あーでもこっちもいいな。目島君はどっちがいいと思う?」
一つはラベンダー色の主張が強い少し色っぽいコーデ。もう一つは桜色や黄緑等が主となったゆるふわなコーデ。
どっちがいいと聞かれたからには、しっかり答えてあげないと行けないよな。
う~ん。ラベンダー色の方は何とも色っぽく、確かに委員長が着ているところを見てみたくない訳でもなく、むしろ見たいが、あまりにも大人っぽさ過ぎて学生が着るには少し派手な気がする。それに委員長は委員長なんだ。ましてや修学旅行。あんなだらしない担任だが流石に止めに入ってくるに違いない。
それならもう一つの桜色や黄緑を使ったこっちの方が学生っぽいし、正統な清楚系の委員長にはぴったりだ。
後者の服に決めて僕は委員長に自分の考え抜いたディスカッションをした。
「そうか~。こっちの方がいいかな? じゃあこっちにする! えへっ」
にっこり笑う委員長にえへっって可愛すぎかよと心の中で突っ込んで勇気を出した。
「委員長。えと、その服……ぼ、僕に……」
身体中力を入れて血管が浮き出る程に力んだ僕は、喉元に詰まった言葉を必至に吐き出した。
「僕に……買わせて、くれないかな?」
言った!! 言ったぞ!
何か一皮向けた気がした。……なんとなく。
「えっ、いいよ! 目島君に悪いし」
委員長なら当然そう言うと思った。思い通りの反応で僕は、頭の中で何度も何度繰り返し反復した流れを確認した。
「いいんだ。なんて言うか。その……デート記念? に。ほら、思い出になるし」
言った後思ったが、デート記念って確かにデートだけど、そういうのって普通カップルがするものだよな……
僕達付き合ってはない……んだよな。
何か、悲しくなった。
いや、付き合ってないけど、プレゼントくらい友達に送っても問題ないだろう。
「僕からの委員長へのプレゼントで」
内心ドキドキしながら言うと、委員長はしばらく考えて、本当に考えて長考して答えを出した。
「目島君がそう言うなら、お言葉に甘えようかと思う。……けど、私も目島君に何かプレゼントする!」
そうしないと私が納得出来ないと付け加えて、服をハンガーごと僕に渡すと、委員長はそのまま服屋を練り歩き始めた。
そんな委員長の後ろをある種、憧れだった荷物持ち係をしながらついて行く。
「委員長……今度は何探してるの?」
「目島君のプレゼントだよ」
ずんずん進んでいき僕に目も暮れず、そのプレゼントやらを探し続ける。
委員長の張り切り様に返す言葉がなくなり、ただ後ろを雛鳥の様に着いて歩く事、数分僕の目の前にとんでもない人が現れる。
「目島君のプレゼント。目島君のプレゼント……あっ」
ぶつぶつと呟いて歩く委員長も、流石に目の前のその人に気がついた。
「あれ~? 委員長じゃん!! それに目島も」
「目島」
「えっ、二人ともこんな所で奇遇だね~何してるの?」
それは紛れもなく、毒ヶ杜さんとその取り巻きである木下と冷百合だった。
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