26日目

昨日。

車の中で聞かされた話を考えていた。

ほぼ、

予定通りだと、

そういう話だった。

ミコトと鳳玉は裏で取引をしていた。

鳳玉の要求は、

ホイッスルと私、スズを渡すこと。

ミコトの要求は、

新しい対天使用の兵器。

ミコトの主張は、

私とホイッスルがあっても、

世界全体で観測されている天使と、

戦うことが出来ない。

ということらしい。

確かに、

私とホイッスルは、

ひとりとひとつ。

世界全体に同時に出現している、

天使と同時に戦うことはできない。

こんな使えないものを所有するより、

鳳玉と取引をして、

新しい対天使用の兵器を手に入れた方が、

遥かに組織を強化できると判断したようだ。

それは確かにそうだ。

ミコトは私とホイッスルを渡して、

新兵器を手に入れる方がいいだろう。

だが、

その交渉が進んでいたなら、

どうしてヒスイとクジャクが、

研究所を襲う必要があったのか?

それは、

ミコトが一枚岩ではないかららしい。

ミコトの中のいわば親鳳玉派が、

今回の交渉を持ちかけたようだ。

そのため、

反鳳玉派の目をくらますために、

今回の襲撃があったそうだ。

だがそのために、

ミコトのメンバーが数名死ぬことになった。

交渉があったなら、

手加減してもよかったのではないか?

そう言うと、

あの場所にいるメンバーを選んだのは、

ミコトの方だといわれた。

今回の襲撃を、

研究所の親鳳玉派は知っていた。

だから、

特定の反鳳玉派だけが、

襲撃のあった場所にいて、

親鳳玉派はそれぞれ別の場所にいた。

襲撃に対して反撃したのは、

交渉を知らないミコトのメンバーであり、

本気でヒスイとクジャクを殺しにくる。

そんな相手に手加減していたら、

自分達が殺されてしまう。

ヒスイはそう言った。

そして、

「しかし、桐島さんは天使との戦いで大怪我をしてラッキーでしたね。彼女は反鳳玉派の急先鋒ですから、今回の襲撃の際、研究所にいたら命を落としていたでしょう」

そう言った。

……なんだか、

……不愉快になった。

それから私は黙ってしまったので、

ヒスイも話すのをやめた。

だが、

もう少し色々、

訊いておけばよかった気もする。

そして今は、

栃木県の中禅寺湖近くにある、

鳳玉の研究施設にいる。

ここは、

御巣鷹山の研究所に比べ、

規模が小さいようだ。

今日の朝ヒスイから、

「逃げなければ外出してもいいですよ」

と言われていたので、

研究所の周囲を散歩してみた。

大きな岩の上で、

ボーっとしていたら、

夕方になったので、

研究所に帰ったら、

夕飯が出た。

今日は、

特に何もなかった。

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