14日目

昼に桐島からミコトの話や、

これからのことを聞いていた。

そして、

夜。

23時過ぎ。

少女がいなくなったことを知った。

少女。

そう、

少女と呼ぶしかない。

少女は私と出会ってから、

ここにきてからも、

一言も喋っていなかった。

名前も、

住所も、

何故あの研究所にいたのかも、

何もかも、

分からない。

桐島の部下から、

少女がいないことを聞かされた私は、

少女を探すために、

外に出た。

しばらく建物の近くを探していると、

突然の爆音。

さっきまでいた建物、

桐島達の、

ミコトの拠点である建物。

その建物で爆発があった。

私は急いで建物に戻る。

そこでは、

銃撃戦が繰り広げられていた。

私は遠くに隠れ様子を伺う。

私が近づいていっても戦力にはならない。

銃など撃ったことも、

触ったこともない。

もし私が敵に捕まっても、

桐島達は助けないだろう。

それどころか、

現時点では、

情報漏洩を防ぐために、

桐島達に殺されるかもしれない。

のこのこ戦場に出て行くより、

ここを離れ、

少女を探す方が賢明だろう。

私は少女を探すために、

森の中に入った。

森を探す理由は、

ここ以外に探す場所がないことと、

森の中は戦場になっていないことの、

2つの理由がある。

銃撃の音や爆音が続く中、

私は森の中を警戒しながら進んだ。

すると、

月の浮かぶ夜空に、

天使の姿を見つけた。

天使は何かを探すように、

上空を旋回していた。

そして、

5分ほど空を飛び回った後、

天使は地上へ下りて行った。

私は身を隠しながら、

天使の下りて行った方向へ進む。

しばらく森の中を進み、

天使が下りたであろう場所に辿り着いた。

そこには小さな滝があった。

その小さな滝の近くで、

私は少女を見つけた。

そして、

天使を見つけた。

いや、

バラバラになった

天使の残骸が、

そこにあった。

身体がバラバラになった、

天使の残骸は、

溶け始めていた。

消えかかっていた。

そして、

その消えかかっている天使の羽を、

少女は持っていた。

私はその光景を見て、

唾を飲み込んだ。

天使の残骸がすべて消えると、

少女はその場に倒れた。

私は少女に駆け寄る。

だが、

突然銃声がした。

私の足元に小さな土煙が舞った。

私は驚いて足を止める。

足音が聞こえた。

その足音の方を見る。

そこには、

背の高い男がいた。

ノースリーブの服。

露出された両腕には、

得体の知れない模様が描かれていた。

左手に銃を持っている。

この銃が、

私の足元を撃ったのだろう。

男が少女に近づいていく。

私にはどうすることもできない。

だが、

男と少女の距離が約5メートル程の距離になった時、

カチリッ、

という音が私の後ろから聞こえた。

男は足を止めて、

私を、

音のした私の後ろを見た。

「それ以上近づくな」

私の後ろから声が聞こえた。

この声は、

「それ以上近づいたら、撃つ」

桐島の声だ。

背後から足音が近づいてくる。

そして背後から聞こえていた足音は、

私の背中のすぐそばで止まった。

私の視界に、

銃と、

その銃を構える手が見えた。

その銃の場所は、

私の頭の横。

桐島は、

私の背後に隠れ、

私の頭の横で、

銃を構えた。

この女、

私を盾にするつもりだ。

私は背をつつかれた。

どうやら、

歩け、という合図らしい。

私はゆっくりと歩き出した。

背後で桐島も私に合わせて歩く。

私と桐島は男と向かい合わせに対峙した。

間には少女がいる。

桐島が私を盾にして銃を構えているのに対し、

男は銃を手には持っているが、

構えていない。

男は、

ただ立っているだけだ。

「銃を捨てろ」

桐島がそう言った。

だが男はその桐島の言葉を無視した。

「銃を捨てろ!」

桐島の声が強くなる。

すると、

「撃ってみたらどうですか」

男がそう言った。

冗談ではない。

顔の真横で銃を撃たれたら、

どうなるか分かったものではない。

「……いちにのさん、で、横に跳べ」

小声で桐島がそう言った。

「いちに……」

桐島が数を数え、

それが2に達した時、

「危ないですから、伏せてくださいねー!」

大きな声が聞こえた。

何事かと思った瞬間、

私の目に飛び込んできたのは、

まるでばら撒かれるように、

飛んできて、

地面に転がった、

数十個の、

手榴弾。

少女を中心に、

手榴弾がばら撒かれた。

私は咄嗟に、

地面に伏せた。

耳を塞いだ。

その瞬間。

爆発音。

大きな爆発音がした。

その時、

私は、

死んだと思った。

あれだけの手榴弾が、

近距離で爆発したのだ。

伏せたところで、

爆発に巻き込まれたのだ。

だが、

私は死んではいなかった。

顔を上げて、

周りを見渡すと、

もの凄い煙で、

周りは見えなかった。

だがその煙の中、

目の前に影が見えた。

その影は私に近づいて、

「この子はアナタに任せます」

そう言って、

抱きかかえていた少女を、

私に渡した。

私はその影を見る。

その影は、

少女Aだった。

昨日も現れた、

聖律教会の少女Aだった。

少女Aは私に少女を渡すと、

煙の中に消えていった。

煙の向こうから、

金属のぶつかり合う音や、

銃撃の音が聞こえる。

私は少女を抱え、

走った。

この場所から、

逃げ出した。

私はとにかく走って、

桐島達の拠点まで戻った。

だが、建物はすでに半壊していた。

建物のそばには、中には、

数名の死体があった。

私は車のドアを開けて死んでいる、

ミコトのメンバーを見つけた。

車で逃げようとしたのだろうか?

私はその車に近づき、

シートに突っ伏して死んでいる、

死体の服を探った。

すると鍵を見つけたので、

車のエンジンの始動を試みる。

数度試すと、

車のエンジンがかかった。

私は死体を車からどかして、

少女を後部座席に乗せ、

運転席に座り、

アクセルを踏み込んだ。

そして、

1時間ほど走っただろうか?

私は今、

車を停めて、

これからどうしたらいいのか、

考えている。

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