13日目

隊長と呼ばれた女は、

桐島と名乗った。

私と少女は桐島の拠点で、

いくつかの質問に答えた。

その後、

着替えを与えてもらい、

食事をした。

久しぶりに腹が膨れた気がする。

食事中、

桐島は電話をしていた。

聞き耳を立てていたわけではないが、

聞こえてきた声から推測するに、

桐島は私達の処遇について、

上司に尋ねている様子だった。

ふと少女を見ると、

フライドチキンを貪り食っていた。

頬にバーベキューソースがついていたので、

ウェットティッシュで拭いた。

食事後、

桐島に呼ばれた。

しばらく会話をしていたら、

桐島の部下が桐島に何か言った。

客が来たらしい。

桐島は部屋から出て行った。

すると、

私と少女のいた部屋の窓から、

あの時の彼女が入ってきた。

この彼女は、

あの研究所で、

私にカプセルを飲ましたり、

脱出させてくれたり、

山の中でトラックが来ることを教えてくれた、

少女Aだ。

「こんにちは」

挨拶をされたので、

挨拶を返した。

「早速ですが、あのホイッスルはどこにありますか?」

そう問われたが、

私は知らない。

桐島に渡したことを告げると、

黙ってしまった。

そこに桐島が戻ってきた。

桐島は少女Aの姿を見ると驚き、

そして腰から銃を外して構えた。

「何者だ」

桐島はそう言った。

「怪しい者ではありませんよ。私は聖律教会の関係者です」

少女Aはそう言って、

手を軽く振った。

その瞬間、

桐島の構えていた銃が弾かれ、

天井にぶつかった。

何事かと思い、

少女Aを見ると、

少女Aの手には鞭があった。

少女Aは鞭を振り、

桐島の手に握られた銃を弾いた。

一瞬の出来事だった。

「聖律教会とミコトはお互いに不干渉。ですが、あのホイッスルは元々聖律教会の所有物です。お返し願えませんか?」

少女Aはそう言って微笑んだ。

「無理だな。あのホイッスルは今頃東京に向かっている」

桐島はそう言って、

銃を拾おうとした。

だが少女Aは再度手を振り、

鞭で床に落ちている銃を弾き飛ばした。

「命を助けてあげたのに、粗末にしないでくださいね」

少女Aはそう言った。

「助けてあげただと?」

桐島が言う。

「そうですよ。天使の襲撃前に、この2人を奪わないであげたでしょう」

少女Aはそう言って私と少女を見た。

「この2人がいなければあなたは天使に殺されていた。私がこの2人をあなたのところへ行かせたのですよ」

少女Aはそう言った。

確かにその通りだ。

少女Aに言われて、

私と少女はトラックを待った。

その後天使の襲撃。

私がいなければ、

ホイッスルは吹かれず、

桐島は殺されていた。

その私も、

2人の少女がいなければ、

天使に殺されていた。

「まあ、『ミコト』と争う気はありません。今日はこちらが退きましょう」

そう言って少女Aは、

部屋の窓に飛び乗った。

「それから、そこの御二方」

少女Aは私と少女に呼びかける。

「天使と戦う気があるなら、是非『ミコト』ではなく、『聖律教会』と共に戦いましょう。私達は常に協力者を募集しております」

少女Aは私と少女にそう言って、

窓の外へ消えた。

それから後。

桐島から説明を受けた。

桐島の所属している組織が『ミコト』という名で、

天使と戦っていることを。

何故そんなことを話すのか尋ねると、

『ミコト』に入ってほしいと言われた。

拒否したらどうなるか尋ねると、

「死か刑務所、どちらかを選べ」

と言われた。

「私としても命の恩人にその2つを選ばせるのは忍びないのだ」

桐島はそう言った。

入る以外の選択肢がその2つでは、

ほぼ強制的と言わざるを得ない。

選択の余地はないということか……。

ということで、

私は、

対天使組織『ミコト』に

所属することになった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る