12日目

朝になる前。

私は山から下りていた。

遠くで銃撃や爆発の音が聞こえていた。

そのため森の中を静かに移動していた。

太陽が地平線から離れた頃。

私は、

少女を見つけた。

少女Aとは違う、もっと幼い小学生程の少女だ。

少女は森の中で倒れていた。

着ている服は、

私と同じ。

白いTシャツが1枚。

それだけだ。

私はこの少女も、

あの建物から逃げてきたのだと思った。

少女に近づいて様子を見る。

どうやら、

寝ているか、

気を失っているか。

とにかく、

生きてはいるようだ。

私は少女に近づいて、

少女に呼びかけてみた。

数秒間があったものの、

私の呼びかけに応じて、

少女は起きた。

少女は飛び起きると、

私に銃を向けた。

私が驚いて停止していると、

私の姿を見て、

自分と同じ格好をしている私の姿を見て、

敵ではないことが解ったのだろう、

銃を下ろしてくれた。

私は少女に近づいて話しかけた。

だが、

何を話しても少女は答えてくれない。

頷いたり、

首を振ったりはしてくれるが、

口を開いてはくれない。

埒が明かないので、

私が少女から離れようとすると、

少女は私の服の裾を掴んだ。

私は少女の手を取り、

立たせて、

移動することにした。

そして、

太陽が真上に来た頃。

私と少女は、

舗装された道路を見つけた。

しばらく舗装された道路を歩いていると、

突然、

森の中から何かが飛び出してきた、

そしてその何かは、

私と少女の前に現れると、

こう言った。

「あれ、まだこんなところにいたんですか?」

それは、

私をあの建物から出してくれた、

彼女、少女Aだった。

少女Aは私と少女を見ると、

「もうすぐこの道を青いトラックが通りますから、そのトラックに乗せてもらうといいですよ」

そう言って、

森に消えた。

私と少女は歩き疲れたので、

少女Aの言葉を信じて、

トラックを待つことにした。

そして約20分後。

トラックが来たので、

私はドライバーに向かって、

手を振ってみた。

すると、

トラックは私と少女を通り過ぎて、

数十メートル先まで進んだところで、

停まった。

そして、

トラックの荷台から降りてきたのは、

武装した男女達。

彼らは私と少女に銃を向けて、

私と少女の周りを数人で取り囲んだ。

私は両手を上げて、

少女は私の後ろに隠れた。

するとリーダー格らしき女が、

一歩前に出て、

私と少女に向かってこう言った。

「お前達、あの研究所から逃げてきたのか?」

私は、

そうだ。

と肯定した。

「なら、荷台に乗れ。家までとは行かないが、街まで送ってってやる」

彼女がそう言って、

他の武装した彼らに銃を下ろすように指示した時、

何か一瞬、

影が差した。

私は上空を見上げる。

何もない、

気のせいかと思った瞬間、

突然何かが急降下してきた。

私はその姿を見て、

叫んだ。

「天使だ!」

私の声に反応して、

その場にいた全員が上を見た。

その瞬間に、

急降下してきた天使の槍が、

武装した彼らの内のひとりの首に突き刺さった。

天使は勢いよく突き刺した槍を引き抜いた。

槍は引き抜かれ、

血が彼の身体から勢いよく噴き出した。

武装した彼らは一斉に銃を構え、

天使に向かって攻撃を開始した。

だが、

武装した彼らが銃を撃つ前に、

天使は私に向かって、

槍を投げた。

一瞬の出来事だった。

身体が動かない。

避けられない。

もの凄いスピードで、

槍は私に向かって、

一直線に飛んでくる。

咄嗟のことに反応できなかった。

槍は確実に私を貫いたはずだった。

そうなるはずだった。

だが、

槍が私を貫こうとした瞬間、

私は横に突き飛ばされた。

槍は私の横を通り過ぎて、

後ろの崖に突き刺さった。

私は何が起こったのか解らなかったが、

そのすぐ後で何が起きたのか、

理解した。

私の後ろに隠れていた少女が、

私に体当たりして、

押し倒してくれたのだ。

そのおかげで、

私は命拾いをした。

私は少女を抱きかかえるようにして、

森に隠れた。

武装した彼らと、

天使の戦いが始まった。

天使は投げた槍を拾うと、

一度上空に逃げ、

再度空中から急降下して、

武装した彼らを槍で貫いた。

武装した彼らは、

自動小銃で応戦するが、

空中を自在に飛び回る天使に、

照準を合わせることが出来ずに、

苦戦していた。

戦っている内のひとりが、

「隊長、アレを使いましょう!」

と言った。

すると隊長と呼ばれた女が、

トラックの運転席に消えた。

そしてすぐにトラックから出てきた隊長と呼ばれた女の手には、

あの小さな筒があった。

隊長と呼ばれた女は、

小さな筒の蓋を開けて、

中身を取り出そうとした、

瞬間、

天使は槍を投げた。

槍は隊長と呼ばれた女に向かって、

飛んだ。

隊長と呼ばれた女は、

その槍を避けたが、

続けて天使は、

隊長と呼ばれた女に向かって、

体当たりを仕掛けた。

隊長と呼ばれた女は、

その一撃を避けられず、

身体を地面に叩きつけられた。

手に持っていた自動小銃と、

小さな筒の中身が、

空中に舞った。

そしてそれは、

森から様子を伺っていた、

私の足元に転がってきた。

私はそれを、

拾った。

これは……。

「吹けえぇぇぇ!!!」

それを拾った私に、

隊長と呼ばれた女の叫び声が聞こえた。

私が驚いて声のした方向を見ると、

天使が、

隊長と呼ばれた女の身体を足で踏みつけ、

槍を振り上げているところだった。

私はそれを……。

転がってきたそれ……。

手の平に収まるようなそれ……。

そう、

笛。

ホイッスルを。

吹いた。

ピーーーーー!

音が聞こえた。

だが、それだけだ。

音が鳴っただけだ。

私は笛を見て、

次に天使と隊長と呼ばれた女の方を見た。

すると、

どうしたことか。

天使の動きが、

止まっていた。

天使は槍を振り上げた動作のまま、

凍りついたように停止していた。

隊長と呼ばれた女は天使の足の下から脱出し、

自動小銃を拾って、

天使に何十発と発砲した。

天使の身体に大量の銃弾が撃ち込まれた。

しばらくの間があった後、

天使の身体が崩れ始めた。

そして、

天使の身体は段々と溶けていき、

最後には、

蒸発するように、

その姿を消した。

その痕跡すら消えた。

天使を、

倒した。

私と少女は、

隊長と呼ばれた女のところに行った。

「助かった……」

隊長と呼ばれた女から、

それだけ言われた。

辺りを見渡す。

そこには死体があった。

6体の死体。

隊長と呼ばれた女が、

「その笛を返してくれないか」

そう言ったので、

私は笛を彼女に渡した。

彼女は、

携帯電話でどこかに電話をすると、

死体をトラックの荷台に、

運び始めた。

私も手伝うことにした。

少女も手伝ってくれた。

彼らの死体を荷台に運び終わると、

彼女と私と少女は、

トラックに乗って、

その場から立ち去った。

そして今、私は、

彼女に連れてこられて、

彼女達の拠点にいる。

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