11日目

今日の出来事は、

朝から順を追って説明した方がよさそうだ。

朝、私が起きてしばらくすると、

窓の外から音がした。

何かと思った。

どうやら窓を叩く音のようだった。

私は窓に近づいて、

窓を開けた。

するといきなり、

窓の外から、

何かが部屋に飛び込んできて、

私にぶつかって、

押し倒した。

私は飛び込んできたものを確認した。

それは女だった。

高校生くらいの女だった。

彼女のことを少女Aと呼称する。

少女Aは私に乗っかったまま、

部屋の中を見渡した。

そして、

腰から青いナイフを取り出して、

私の首に押し付けた。

そして、

「口を開けて」

と言った。

私は従うしかない。

口を開けた。

そしたら少女Aは、

私の口にカプセルを放り込んだ。

私は吐き出そうとしたが、

「吐き出したら死ぬことになります」

と言ってナイフを押し付けた。

私は。

カプセルを、

飲み込んだ。

すると少女Aはナイフをしまい、

立ち上がって、

そのまま窓の外へジャンプした。

私が立ち上がって、

窓の外を見たら、

もう既に少女Aはいなかった。

一体何事だったのか。

昼頃。

白衣を着た男と女が入ってきた。

私がふたりを見ていると、

女の方が私にこういった。

「あなたの処遇が決まった」

それだけ言うと、

数人の男が入ってきた。

ひとりの男が私の首に何かを注射した。

とたんに私の意識は朦朧として、

その場に倒れこんだ。

朦朧とする意識の中、

憶えているのは、

男が私を車椅子に乗せたことだけ。

次の瞬間、

私は爆音で目を覚ました。

辺りを見渡すと、

白い部屋の中にいた。

私は簡易寝台のようなものの上に、

寝かされていた。

私以外に数人が同じように、

寝かされていた。

私や彼らが着ているのは、

一枚の白いTシャツのようなもの。

私は立ち上がって、

近くにいた男の顔を覗き込んだ。

寝ている。

起こそうと思い、

男に呼びかけたり、

顔を叩いたりしたが、

起きない。

どうやら深く眠っているようだった。

他に数人いたので、

同じように試してみたが、

起きなかった。

私は部屋のドアに近づいて、

ドアを開けてみた。

ドアは開いた。

どうやら鍵はかかっていなかったらしい。

私は部屋から脱出したが、

部屋の外は長い廊下と、

等間隔に配置された扉。

そしてこちらも等間隔に配置された、

天井の蛍光灯。

それだけだった。

私が廊下に出ると、

また爆音が聞こえた。

今度は連続で爆音がした。

私は走った。

爆音から遠ざかるように走った。

しばらく走ると窓を見つけた。

窓から外を見ると、

この場所が2階であることがわかった。

私は廊下を走り、

階段を見つけた。

階段を勢いよく下りると、

下りている途中で、

何かにぶつかった。

それは人だった。

女だった。

彼女の手には、

銃が握られていた。

彼女は私を認識すると、

「被験者か!? ……邪魔だ!」

と言って、

私の顔に銃口を向けて、

引金を引いた。

目の前で爆音がした。

時間が止まったと思った。

だが時間は止まっていなかった。

銃弾は私の髪を焼き、

後ろの壁にめり込んだ。

そして、

目の前の彼女は、

口から血を吐いて、

その場に倒れた。

背中には、

細い、

短刀のようなものが数本、

突き刺さっていた。

「無事ですか?」

そう問われた。

私は声のした方を見た。

するとそこには、

朝、窓から飛び込んできた彼女。

私にカプセルを飲ませた少女Aがいた。

少女Aは何やら言っていた。

そして私を殴った。

痛みが身体に走った。

だがその痛みで、

私は正気に戻ったようだ。

私はさっきまで震えていた。

恐れていた。

恐怖に震え、

目は宙を泳ぎ、

耳は何も聞いていなかった。

だがその痛みで、

私は正気に戻った。

少女Aは私の手を引き、

走った。

走っている間、

爆音が響いていた。

「アレはどこにあるか知っていますか?」

少女Aに問われた。

私は、

アレが何か解らないと答えた。

「アナタが渡された小さな筒みたいなヤツです」

少女Aはそう言った。

私は一瞬何のことだかわからなかったが、

すぐにそれが何か思い当たった。

そう。

あの日、

2度目に天使を見た日。

車の中で霧散していく男から渡された、

小さな筒。

あれのことを言っているのだろう。

私は、

解らないと答えた。

その後しばらく黙ったまま走る。

爆音が聞こえる。

私と少女Aは建物の外に出た。

少女Aは、

「この建物から離れてください」

そう言って、

建物の中に戻っていった。

私が何か言う間もなく、

少女Aは見えなくなった。

私は、

建物を見た。

大きな建物だった。

その建物のところどろこから火の手が上がり、

地上や上の階で、

爆発があった。

私は、

走った。

建物から逃げるように、

走った。

そして、

森の中へ、

逃げ込んだ。

そして今は、

山道を下っている途中だ。

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