そのきく何のきく 気になるきく ②「利く」「効く」

 前回はグループ①【音に関すること】「く」「く」「く」の3つについて説明していきました。読んでない人はそちらも読んでみてくださいね。


 今回は残りのグループ②【ものごとの作用に関すること】に分類した

「利く」「効く」

 2つの使い分けについて見ていきましょう。


 今回も前回と同じく、参考元は「記者ハンドブック」からとしています。

 小説創作にも非常に役立つ本ですから、気になった人は是非とも買ってみてくださいね。「ハンドブック」の名前のとおり、辞書としてはとても小さく、その上お安いのです。



く】

 薬など、能動的に何かを変化させる作用を持つものに対して、限定的に使われます。ただ、その範囲は意外と広く、宣伝や風刺などにもこの文字が使われるようです。「効果が出る」で言い換えができるものは大体がこちらになります。

(例)・本当です。このキノコがガンにくんです。

  ・ツイッターの宣伝がいて読者数が増えてきた。

  ・エアコンがいてきた。裸でさえなければ、とっくに暖かいのに。



く】

 おもに役に立つもの、機能するものなどに使用することになっていますが、上記の「く」と比べてると非常に広範囲に使われます。「効果」に関係しないものについては、だいたいこっちになりますね。

(例)・たかがメインカメラがかなくなっただけだ。

  ・敵の新型は、とても小回りがくらしい。

  ・小娘が! いたふうなことを!



 なお、「記者ハンドブック」には《使い分けに注意》と題して、こんな例文がわざわざ掲載してあります。


「わさびをかせる〔働かせる〕」

「わさびがく〔効果がある〕」


 な……何ということでしょうか。

 そう、わさびは立場によって「きく」に使用する漢字が異なるのです!


「泣かせやがって、わさびのききすぎかな」

「よくきかせるように、たっぷり入れといたからな。きいただろう?」


 こんななにげない会話ですが、この用例のせいで、悩む人はそりゃもう悩みます。

 この「きく」はどっちにすればいいんだろう?

 同じ人が言っているのに、2つめは「く」で3つめは「く」? えっ? むしろ誤字に見えない? じゃあ1つめは効果があったの? それとも働かせたって意味?


 安心してください。例に漏れず今回も「使い分けに迷う場合は平仮名書き」の注意文も載っていますから。

 「迷ったらひらがな」というのは、結構大事な考えです。




 というわけで、2回にわたり「きく」の使い分けについてのお話でした。


 同音異義語もあり、言葉の表す範囲が多岐にわたるため、使い分けの悩ましい単語のひとつです。

 どの漢字を使えばいいか分からなければ、詳しい人に尋ねてみたり、自分で辞書を引いたりするのをオススメします。

 だってほら、言うでしょう? 


「【きく】は一時いっときの恥、【きかぬ】は一生の恥」って。


 さて、このときの【きく】にはどんな漢字を当てるのがいいんでしょうかね?

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