「一人」と「独り」はどう違う?

 どうもどうも、ひとり遊びがとっても大好き、イカあきです。


 さて、今回のお題は「ひとり」

 人数を数えるときの「ひとり、ふたり」ではありますが、皆さんはこの「ひとり」に意外な書き分けがあるのをご存じでしょうか。

 今回の参考は「NHK 漢字表記辞典」から。

 こちらの辞書では、「ひとり」の漢字には次の3つがあるとされています。

 ・「1人ひとり

 ・「一人ひとり

 ・「ひとり」


 あくまでもNHKをはじめとする横書きのテレビ放送ルールとは言えますが、これらはそれぞれ微妙に使い分けが異なります。


 というわけで、問題です。


①ひとり

②ひとり旅

③ひとり娘


 この3つの言葉は、それぞれ「NHK 漢字表記辞典」では

1人ひとり」「一人ひとり」「ひとり」のうち、どの文字を使うことになっているでしょうか。

 できれば調べたりはせずに、皆さんの感覚で少し考えてみてくださいな。



 さて、では見てみましょう。

 この3つの言葉は、辞書ではこのように書かれています。


ひと

1人ひとり

一人ひとり息子


 どうでしたか? 皆さんの感覚と合ってましたか?

 「はぁ~なるほど、そういう字を使えばいいのね」と感心したあなた、そこで終わっていいのでしょうか。

 これらの使い分けは、どういった基準でなされているのでしょうか。

 それを考えるのが、今回の本題です。




1人ひとり

 数字の部分がアラビア数字になっている「1人ひとり」は、この数字の部分が「2人ふたり」や「3人」のように増減しても通じる場合に多く使われています。

(例)・1人ひとりずつ(2人ふたりずつ、5人ずつなどが考えられるため)

  ・1人ひとり暮らし(2人ふたり暮らし、10人暮らしなどもあるため)

  ・1人ひとり旅(2人ふたり旅、4人旅など、みんなで行くと楽しいため)



一人ひとり

 こちらは上記の「1人ひとり」とは逆に、「一人ひとり」の数字の部分がほぼ不動なもの、2人ふたりや3人になったりしない、慣用句などに多く使われる表記です。

(例)・一人ひとり息子、一人娘(二人ふたり息子、十二人娘とはあんまり言いませんね)

  ・一人ひとり残らず(二人ふたり残らずとは言いませんね)



ひとり】

 「単独であるもの」「孤独であるもの」を中心に使われます。

 また、慣用的な部分になりますが、「独占どくせん(ひとりじめ)」「独善どくぜん(ひとりよがり)」など、意味合いの同じ二字熟語がある場合には、それにあわせて「ひとり」が使われるようです。

(例)・ひとり言、ひとり相撲(本来は複数人で行うもの)

  ・ひとりぼっち、ひとり者(孤独である意味合いが強いもの)

  ・ひとめ、ひとがり、ひとり立ち(独占、独善、独立などの二字熟語)



 また、上記のものとは別に、特にひらがな「ひとり」にする場合もあります。

【ひとり】

・ひとりでに

一人ひとりひとり(一人一人ひとりひとりと書くことも可能)


 これらについては、恐らく読みやすさのためひらがなになっているのではないか、と私は個人的に思っています。


 また更に面白いことに、同じ言葉であっても状況によって使用する漢字が異なるものが少数ながら記載されています。


【ひとり歩き】

1人ひとり歩き(夜道の1人ひとり歩きなど、広く一般に使われる)

ひとり歩き(赤ちゃんのひとり歩き、言葉のひとり歩きなど、勝手に動いてしまう意味合いがあるもの)


【ひとり暮らし】

一人ひとり暮らし(単独が強調されるとき。「気楽な一人ひとり暮らし」など)

ひとり暮らし(孤独が強調されるとき。「老人のひとり暮らし」など)



 どうでしたでしょうか、細かく考えると実はかなり細かく使い分けのある、とっても困った「ひとり」という単語でした。


 実際のところ、日常生活や小説なんかで使う分には、そのときにちゃんと意味の伝わる文字であれば、いずれの表現でも問題はないでしょう。

 ただ、複数人で文章を作らなければならない場合……例えばテレビのテロップなどでは、文字の統一のためにそれなりにルールに従って文字が選ばれているはずです。是非とも機会があれば、ニュース番組などで「ひとり」がどんなふうに使い分けされているか、注目してみてくださいね。

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