その「かえる」は、換える? 替える?

 げこげこ。

 今回は、かえるのお話です。

 かえるはかえるでも、「かえる」ではありませんのであしからず。げこ。


 さて、「かえる」って、どれだけ漢字があるか皆さんはご存じですか?

 「かえる」で変換ボタンを押してみると、こんなにたくさん変換候補が出てきますね。


 「かえる」「かえる」「かえる」

 「かえる」

 「かえる

 「える」「える」「える」「える」


 意味も漢字も、なんていろいろ! 他にもあるかもしれません。

 すごいですね、かえる。げこげこ。あなどれない。

 今回は、この中の「変える」「換える」「替える」「代える」の4つについてのお話です。



 この4つの「変える」「換える」「替える」「代える」

 皆さんはちゃんと使い分けができていますか?

 当然できてるって人は、どんな風に使い分けるか説明できますか?

 というのも「かえる」という単語、意味のわずかな違いで、漢字を使い分ける必要があるのです。

 今回はどんな使い分けが推奨されているか、新聞・通信・放送向けの辞書「記者ハンドブック(第13版)」から紹介していきましょう。



【変える】

 変化、変更に関するものはこの「変える」

 広辞苑では「ものごとの性質や中身が前と相違する」とされています。

 (例)・夕焼けが街を赤く変える。

   ・あの男のせいで、彼女は変わってしまった。

   ・パソコンの画面設定を変える。


【換える】

 交換や、換金に関するものはこの「換える」を使います。

 (例)・窓を開けて空気を換える。

   ・盗んだものをお金に換える。

   ・おい聞いたか? 今日から配置が換わるらしいぞ。


【替える】

 前のものをやめて、新しいものにする場合はこの「替える」

 (例)・替えのパンツを持ってきてよかった。本当に。

   ・部屋の模様替えをしておこう。

   ・年度替わり/月替わり/日替わり定食 


 この他、「替え歌」「替え玉」「替え刃」など、他の単語とくっつくことが多いのが他の「かえる」にはない特徴です。


【代える】

 代理や代表、交代に関するものはこの「代える」

 本来のものではないものに別の役目をやらせる場合がこれです。

 対象が人間の場合はほとんどがこれです。誰でも特別なオンリーワンってことですね。

 (例)・あいさつに代えさせていただきます。

   ・あの人は俺の親代わりってやつさ。

   ・背に腹は代えられぬ。



 どうでしたでしょうか? 皆さんの思っていた「かえる」のイメージと合っていましたか?

 ちなみに私は「替え歌」がなんとなくしっくりきません。歌詞を変化させて歌っているから「変え歌」だと長年思っていたのですが、「歌詞を取り替えて歌う」という意味のようですね。


 こういった漢字の使い分けは、「変化」「換金」「交代」など、漢字の熟語が先にあって、その熟語に合わせて使い分けができたのではないかと個人的には思っています。

 熟語を思い浮かべることができれば、大体は間違わずに済みそうです。


 さて、では、ここで問題です。

 先ほど紹介した「記者ハンドブック」では【ドルを円にかえる】の「かえる」はどの文字を使うように用例が書いてあるでしょうか?

 ここまで読んだ方はお分かりですね? お金に関することだから……。


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 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

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 ↓

 ↓

 ↓


 正解は、「ドルを円に【替える】」です。

 えっ? どういうこと? お金にかえるのは「換える」じゃないの?

 ここまで読んでいた方々から、非難の声と多量の石が飛来するのを感じますね!


 実はこれ、「為替かわせ」(通貨を両替すること)という単語があるので「為」から「える」が使われているようなのです。もしくは、お金同士の交換は、古いもの(ドル)から新しいもの(円)に替えていると考えられるということなのでしょうか。


 ちなみに「記者ハンドブック」では、「かえる・かわる」の項目はこんなひと言で締めくくられています。


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[注]書き分けに迷う場合は平仮名書き。

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 ええ~、それならいっそ最初から……。いえ、言いますまい。それを言っちゃおしまいです。

 というわけで、今回はとっても単語「かえる」の紹介でした。

 全く、日本語って困ったものですね!

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