第4話 自己肯定もしくは承認欲求

 自己肯定感というものをいまだに理解できないでいる。自分の無才能に長年とらわれていたせいで、自分の存在価値というものが、他人の定規がないと判断できない。他人に褒められること、他人に頼りにさせることで、僕はようやく自分の存在意義を見つけられる。

 

 僕が、学生の時、勉学に一生懸命になれたのは、自身の承認欲求のためである。誰かに褒められるため、頼りにされるために、他人よりも一歩でも前に進んでいる必要があると考えていた。また、イベントごとには積極的にかかわるようにしていた。面倒ごとを丸ごと引き受け、頼み事は断らない。そうすることで、自分は他人の役に立っているのだと、必要にされているのだと自分に言い聞かせてきた。


 肥大化した承認欲求は、自分に完璧を求めるようになっていたことを、うつになって気づかされるようになった。他人から必要とされるために、常に失敗をしないように心がけるようになっていた。一度でも失態を犯せば、周りから必要とされなくなる気がしていた。不要のレッテルを張られた人間が、集団の中でどのように扱われるかは、中高で嫌になるほど思い知らされていた。僕は、もう一人になりたくなかった。


 大学生の時は、友人にも恵まれ、僕の承認欲求は満たされていた。お互いの過去を打ち明け、自分の願望を恥ずかしがることもなく打ち明けられる友にも出会った。僕はようやく居場所を見つけられたと思った。


 しかし、研究室に配属されてからは、その友人たちとも疎遠になってしまった。代わりに厳しい規則の元、失敗を恐れる生活が戻ってきた。不要のレッテルが常に目の前にちらついた。追い打ちをかけるように、専門分野への苦手意識が僕を苦しめた。僕が何度やっても習得できない専門知識を同期たちは難なく身に着け、先輩たちと専門分野で語らう者もいた。僕が、勉学において頼りにされることはなく、劣等感ばかりが募った。それならばと、イベントごとではいつも周囲に気を回し、雑用をこなしていった。少しでも使える人間だと思われたかった。

 

 

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