鷺の羽
東刻は鷺の羽にて舞いとなす。
片揺れの止まぬは諍いの例有らぬ故。頻りと交わす暁闇、異母の乳垂れぬは馬鍬為らず火炎の壺、夜鳴きに冴える横臥の潮目なり。憫笑の垣根を越えるは、西城の謀議も露の僻目かと巷間に流布の成り行き。
さても煩悶の宵、吾妻が嚆矢たれと盲腕の義浄すは、明眸の差桑と計らいの滅腹ならん。座譲の甲斐無きとも、天層の幕間憚らぬ癪が音頤、而して轟きの遇。
「放恣の沙汰、暫時の態と仄聞仕る」
沈思の破、博労に鬻ぐ。
「斯様にて返撫の仕儀」
益荒男が馬上の紅面、低回の碌を裂く間に寸時逸する也。
「詩枇猛り、嵩ずれば避止。壊乱必定との諮りに、鉄丙の地祇も早や閲すると聞くが」
「等充たるは軟疎へ至る。虐淫の儀に建碑無用と帖記されたし」
「ふぬ。廟腐す民に凪の報あらざりし、か」
嘆息、白煙に袁を糺す。
「壊了。さてまた」
相笑。緊滅に到。
「甚、時に抱懐す。いざ」
「いざ」
寸暇に請怨足らしと馬音高鳴の刹那、紫熱の束、地に鍬なす。
獣喚両耳を裂き、金埃の螺鎮む睥睨の際、重畳たる汀より着呈したる異形惨景。両人暫し相食む。
「魔の戯羅、否か。犀可知給うぞ」
「厭戯。吹鳴に非ずや」
橋上に玉石割れんと漸次の計鳴り亙るしも、切壊されし胴腹、散腸飛沫の湯気に臭吐爛痢の態あり。
「我楓せし。無涯」断末の息、霜寒に辞刻む。「嗚呼、禰怒」
櫃塩に塗れ、潮の瘢痕も顕わに鳴謳う牌怪に況して、屠字の砲止む事無し。
「甘楽。毘に照らす近江の騎胆よ、腎払底の萎根同然」
後嗣空胚に優るは、晩玖に誰何の類いと丁子すべき。猶樽の妃、閨にて果つる様に似たり。
「たとえ澎湃満腔を穿つとも、天智に恃むは痔血をだしに珀を食すが如し」
塵埃降着の夕べ、仁士の擬足垂れ布に燃ゆる宵。馬鋳鈴なる風雅の趣あり。
「破邪完了。今や離合の褥に久慈さえ紬縒ろうぞ」
武具鴇の斬、塞翁が馬。
「鞭撻、鞭撻」呵呵大笑。
孤死。肢蝕。
環。
鷺の羽、
完。
戯文集 ミラ @miraxxsf
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