「この滑空ライトノベルがすごい! 2021」所感

 夏の暑さがほぐれ過ごしやすくなってくるこの季節、ライトノベル界隈のもう一つの祭典がかくラノより早く開催されました。コロナの影響で例年通りの開催が危うい状況でしたが、無事琵琶湖での開催ができたようで良かったです。「この滑空ライトノベルがすごい!」も、今回で第十回とひとつ大きな節目の年。


「エンジンを使用しない滑空飛行の機体、もしくはそれに準ずる装備が活躍するライトノベル」の中から最も優れた作品を表彰するこの企画。あまりにもニッチすぎるために候補作が二作しか無かった第四回の「尾翼足りない事件」が話題となり逆に脚光を浴びるようになりました。以降は候補作が二桁に届く年も見られ活気づいていますね。記念大会となる第十回、最終候補作として選ばれたのは、


「愛憎と義翼の挽歌」(著:鞍馬三太郎、マーズ文庫)

「アサルトライフルはおやつに含まれますか?」(著:佐久間摩真間ままま、山西ファイナル文庫)

「イカロス部 ~青春低空飛行録~」(著:美鷹つばさ、サターヌ文庫)

「風見鶏の鳴く前に」(著:鞍馬三太郎、マーズ文庫)

「飛べ、そして死んでしまえ」(著:増田増也、マーズ文庫)


 の五作品でした。


 ま~~~相変わらずなマーズ文庫の比率! 毎年最終候補作に何かしらの作品が入る滑空ライトノベルの大御所ですよ。そんでもって今年は鞍馬三太郎先生二作入っちゃてるし。さすが過去二回最優秀作品を受賞している猛者、ネタが尽きずいまだ上空を飛び回ってらっしゃいます。


「イカロス部 ~青春低空飛行録~」の美鷹先生は第一回以来の登場。近年は青春群像劇を中心にライト文芸方面でも活躍されていましたが、久しぶりに古巣のサターヌ文庫から発売した新シリーズで見事候補作入りを果たしました。


 そして今大会のダークホースはもちろん「先輩、今の業界なら間違いなく長文タイトルっすよ!~こうやってサブタイトルでも字数を稼いで文庫新刊一覧で圧縮が掛かりすぎて読めないレベルまで無駄に伸ばすっす~」でその名を知らしめた佐久間摩真間先生の殺し屋幼稚園児コメディ「アサルトライフルはおやつに含まれますか?」。いや確かに滑空要素はありましたけど……候補だと微塵も思ってなかったのでびっくり。


 どれもライトノベルとして高い評価はされている作品ばかり。その中から、さらに滑空ライトノベルとしての栄冠を手にしたのは……!


 ドゥルルルルル……(ドラムロール)

 デデン!


 美鷹つばさ先生の「イカロス部 ~青春低空飛行録~」でした!


 いやー、嬉しい結果でしたね。今回の最終候補作では最推しだったので。シリーズ開始直後ですが、読んでいて滑空ライトノベルの歴史に名を残しそうな予感がびりびり伝わってきました。単純な面白さだったら「アサルトライフルはおやつに含まれますか?」の方が面白いとは思いますが、滑空ライトノベルとしての完成度としてはイカロス部に軍配が上がるので妥当な結果でしょう。


 イカロス部はシリーズ続刊の予告が既に出ており、鞍馬先生以外誰も成し遂げていない二連覇もじゅうぶん射程圏内。とはいえ鞍馬先生が返り咲くかもしれないので、来年はさらに注目の戦いになりそうです……! 期待しつつ、来年もまたいいフライトが見られることを楽しみにさせていただきましょう。

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