第2話

 目が覚めたら青い空。草木がなびいている。

 雲がゆっくりと流れ、どこからか鳥のさえずりが聞こえてきそうだ。

 周りを見渡すと山々や草原が広がり、どこか田舎の風景といった感じだった。

ここが異世界か。


大きな木が遠くに見える。その近くに見えるのは道だろうか。


「とりあえず道なりに進めば人に会えるかな?」


 そう判断し、目の前の大きな木を目指して歩き出す。やがて道が見えてきた。これは確かに道だ。


「さて、どっちに向かうか、だけど…」


 道が分かれている、右か左かどちらに行こうか悩むな。どうしていいのかわからないが。


「とりあえず木の棒で」


「カカンっ」


左の方に棒が倒れた。歩き初めて数分がたつ。まずいことに気がついた。食糧がない。水もない。町に着いたとして、それからどうする? お金がない。財布はあるが、こちらの通貨がはたして使えるか? 普通に考えて使えないだろう。さてどうしたものか…。

 音が聞こえてくる。振り返ると遠くからこちらに向かってくる何かが見える。あれは…馬車か。馬車なんて初めて見た。おそらく誰かが乗ってはいるのだろうが……。

 異世界に来て初めてのファーストコンタクトだが、どうしたものか。馬車を止める? 乗せてください。それもアリかもしれないが、やめることにした。何故か。

 馬車が近づくにつれ、その馬車がえらい高級なモノだとわかったからだ。きらびやかな細工と重厚な作り。間違いなくあれは貴族とか金持ちの乗るモノだ。

 そんな人を止めて「無礼者! 手打ちにしてくれる!」とでもなったらたまらない。後ろから近づく馬車に道を譲り、端の方へ身を寄せた。

 目の前をガラガラと土煙を上げながら馬車が通過していく。面倒なことにならずにすんだと、また道に戻り、歩き始めようとして馬車が停車していることに気がついた。


「君! そこの君!」


 バタンと馬車の扉を開けて茶髪の金持ちそうな若者が話しかけてきた。


「なんでしょう…?」


 興奮した様子でこちらに向かってくる紳士を見ながら、言葉が通じると僕は安堵していた。

 ガシッと肩を掴まれ、ジロジロと舐め回すように身体を見つめられる。え、なにこれ。ヤバイ状況でしょうか。


「君はどこから来たんだ。見ない顔だけど。」

「僕ですか」


 急に話しかけられて驚いてしまったけど、大丈夫そうだ。


「町に行くんだ一緒に来ないかね」

「いいんですか」


とても優しい人に会えてよかったと思っている。


「君珍しい服を着ているな。ほかに何か持っていないかね」

「ハンカチを持っています」


「そのハンカチ譲ってくれないか」


お金もないし、今は話に乗っておくか。今後に重要になってくるかもしれないし、生活するうえでは、仏用不可欠だしな。町に行けばは俺と同じような人もいるかもしれないし。


「はい、わかりました」

「よかろう! 馬車に乗りたまえ。次の町まで乗せてあげよう。」

「では取り引き成立ということで」

 

 紳士と僕は固い握手を交わす。そのまま馬車に乗せてもらい、次の町まで三時間ほど揺られた。手触りや縫い目などを興味深く確認していた。

名前を聞いていない。

「すいませんが、貴方をなんと呼ぶといいですか、僕はれおといいます」

「ああー、すまない、クラインといいます」


 服飾関係の仕事をしているそうで、今日もその会合に出た帰りだそうだ。なるほど、服飾に携わっているのならあの反応も頷ける。

 ここは元いた世界と違い自然豊かな世界が広がっている。見たことのない世界。

これからはここが僕の本当の世界なのだ。




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