輝く夏
最後の打者をフォークで空振り三振に打ち取り、高木が一塁に送球した瞬間何かが見えた気がしたが、マウンドに集まってきた選手に押しつぶされ、見えなくなってしまった。
インタビューを受けてメダルを貰い、再びグラウンドに戻り閉会式で優勝旗を貰った瞬間の、スコアボードの奥。その空の青さがその景色に近かったのかもしれない。
今になってわかる。
シュウが自分の国を見ていた。青田が仲間を見ていた。ハカセは、何かを見たかったが、何も見れなかった。
自分は広い世界を見たかったのだ。
歓喜のマウンドからの景色、優勝した瞬間の空、そして――初めてみた甲子園。
見たときに、初めて分かった。
外壁の蔦を見て感動し、グラウンドの広さに感動し、誰もいないスタンドの広さに感動し、そして今、満員の客席に打ち震えている。
サイレンが鳴った。高木のサインに頷き、大きく振りかぶる。
全ての瞬間が、求めていたものだった。
内角に直球が決まり、スタンドが湧く。
全てが輝いていた。
熱い春夏秋冬 青海老圭一 @blueshrimp
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