厳しきかな現実
僕は、有栖と一緒に胴で空を切る。身体中から血の気が引くのがわかる。
どうする、どうする、どうする、どうする、どうする!!!!
必死の思いで思考を張り巡らせる。
このまま落ちたら間違いなく死ぬぞ!!
有栖を守りつつ生き延びる方法なんていうものは今の僕には思い浮かばない。
そして有栖が僕に向かって大声で話す。
「兄さんなら大丈夫!!」
そして、僕は有栖に手を差し伸ばす。有栖は僕のその手を掴む。
そのまま抱き寄せる。そしてに地上までの距離は目前に迫る。
そして有栖を抱きかかえたまま地に背を向け落下した。
しかし、死んではいないかった。
そして僕はこれは奇跡でも偶然でもないということを直感した。
僕は有栖を胸に抱えたまま身体が地に埋め込まれていた。
有栖は無傷だった。
しかし不思議だ、普通常人であればあの高さから落ちたら間違いなく死ぬだろう。
だが、死んではいないましては痛さも思ったほどでもない。まぁ、結構痛かったけど。
「兄さん大丈夫?」
「うん、微妙かな?」
そう答えると未だ倒れたままの僕に右手をさしのばしてくれたので僕はその手を掴み立ち上がろうとしたのだが…
その時に身体を持ち上げるために着いた左手で僕はすごい勢いで身体が飛ぶ。
結果としては…うん、有栖を押し倒してるみたいな。うん、なんかねすごい迫ってるみたいなかろうじて。
もう少し細かく言うと、地面に身体を衝突させないように左手地面に手を着き先ほどまで有栖の右手を掴んでいた僕の右手で有栖を抱えているという状況だった。
顔と顔の距離は紙一枚と言うのにふさわしい距離感だった。互いの息が当たるようなこの状況、先ほどの緊迫した状況。僕の人生はまだまだこれかららしい。
しかし、これもまた不思議だ。普通であればこんな状況はありえない。もちろん物理的な意味でだ。おそらくいつもの僕ではこんなことはできない。有栖を抱えつつ左手一本で身体を支えるなんて到底不可能だ。
そして、改めて周りを見回す。そこには
そして、核心に近づく。
「ねぇ、有栖。ここって異世界ってやつかな?」
僕が有栖のそう聞くと有栖は「そうだよ」と言った。まるでここがどこ知ってるかのように、まるで正解を知ってるように。
「有栖、これから僕はどこに行けばいいのかな?」
「大丈夫だよ。ついてきて兄さん」
僕と有栖は草木を掻き分けながら道に出る。
「このままあの壁の方に行けばいいのかな?」
そして、有栖は頷いた。
恐らくあの壁は防壁だろう。国を囲うように出来ているのだろう。それは見ればわかる。草原から見る壁の方は、見える限り全体が壁だった。
「ねぇ、有栖?あの国はなんていう名前なの?」
「幻想都市『ドレイアム』だよ?あと兄さん。そのね、もうここもドレイアムなんだよ」
それも、そうか。ということはここ自体も壁で囲まれているのだろう。しかし周りを見回しても壁は見えなかった。
「ここは第六区だよ」
第六区と言われてもわからないんだけどね。
「ねぇ、有栖。ドレイアムは何区まであるの?」
「十二区まであるよ」
「じゃあ、あと何個か質問していいかな?」
「大丈夫だよ、ドレイアムの事を教えればいいんでしょ?」
おぉ、我ながらできる
「ドレイアムはね、十三の区から出来ててね。」
「いや、でもさっき十二って言ってなかった?」
「十二区~特区でできてるんだよ。そしてね、この世界には
なるほど、わかりやすい。最高の
「じゃあさぁ、最期に質問なんだけど。有栖は
「私は入ってるというか私の
マジか。いや、マジか。まさかの有栖がボスですか。
恐れ入ったね、というかね、うんちょっと怖いかな。
「で、有栖の
「第六区にあるよ。ほとんど壁際のところ」
そうして僕ら道を辿った。すると視認出来ない速度でで正面からメイド服の様な格好をしたナイスプロポーションの女性が現れた。有栖はその女性に対して臆することなく話しかけた。
「ハク何してるの?」
しかし、その有栖がハクと呼ぶ女性はその言葉に答えることなく僕を見つめ涙を流していた。
そして、すぐに涙を拭い僕に言う。
「おかえりなさいませ。夕様」と
もちろんの事ながら耳を疑う。本当に疑った。
「えっと、あなたとどこかでお会いしたことってぇ…」
小さな声で何かを呟いたように見えたが僕にはそれが何を言っているかは聞き取れなかった。
「いえ、初めまして夕様」
「で、何で僕の名前知ってるの?」
「それはその何となくです」
「そんなわけ無いよね!?」
「深い事情を無理くりに聞いてくる男は嫌われますよ」
えぇぇぇぇーーー。まぁ、いいけどね。
「それで、えーっとハクさんだっけ?」
「呼び捨てで結構ですよ」
そうなのか、いやでも年上っぽいしな。身内というわけでもないし。
「そういうことなら」
お、思ったことがばれてる!?
いや、なんでだ。そういう能力か?まぁ、こんな世界だしあり得なくもないよな…
「違いますよ、ただの読心術です」
しれっと怖いんですけど、それ。
「そんなこと無いですよ。それより早く
そう言ったハクさんは僕と有栖を抱え走り出した。
しかし、異常な速度で前方からの風圧で首が飛びそうになっている。
死ぬ、死ぬ、死んじゃうよ。
「あぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
「大丈夫です、夕様。有栖様お願いできますか?」
「うん、わかった。『
すると、さっきまでアホみたいに吹いていた風は一瞬にして止んだ。
「今のって、あれ魔法的なアレ?」
そういうと有栖はうなずいた。
そして、たどり
そこには一般家庭よりやや大きい(僕の主観だが)レンガ造りの三階建ての一軒家だった。
ハクさんからにおろしてもらったあと有栖が扉を開ける。
すると、そこには心平と新手さんがいた。
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