第17話 魔法陣の行き先
迷宮にあった魔法陣を使用して、青の大陸に来た俺たちは、なぜか筋肉マッチョな魔人族に睨まれていた。いや、魔人族だよな?魔王みたいな人間と同じ見た目の魔人族ならまだしも、のっぺりとした顔に一つだけ真ん中に大きな目玉があって、背中に禍々しく赤黒い翼が一対半ほど生えていて、筋肉マッチョな魔人族何て聞いたことも見たこともない。その前に、その3枚目の羽はどこから生えているんだ?
ましてや、本を読んだことのあるライズすら知らないのだから、おそらく新種か何かだろう。
「おいテメェら……誰の許可を得て、この魔法陣を使った?」
口がないのにどうやって喋ってんだよ。
あれか?目は口ほどに物を言う技法か?どんな技法だよ。
とりあえず、目の前のマッチョに向けて一言。
「「「魔王に許可をもらった」」」
「……どうやら、嘘じゃねぇみてぇだな……ついて来な」
マッチョは俺たちの目を見て、何を感じたのかそれが嘘ではないと言い、俺たちを出口へと案内してくれた。
この筋肉マッチョの名前はマチョニッキンと言い、周りの魔人族からは親しみを込めて『マッチョさん』と呼ばれているらしい。あながち俺の予想も外れてはいなかったんだな。
そして、このマッチョさんの種族は魔人族ではなく、悪魔人族。悪い魔人族ではなく、悪魔人族。通常の悪魔族と違い、契約もしないし、対価も取らないらしい。近くにいた、魔人族っぽい人から出口に向かう際にこっそり聞いた。
新種じゃなかったのかよ、くそぅ。
どうやってって言われても、忘れられているだろう俺の特技で。
いい加減覚えて欲しい。
マッチョさんによると、この魔法陣のある砦は、森に囲まれているらしい。そして、その森は滅多に人間が入らず、かなり危険な魔物も多く住んでいると言っていた。
砦とは、この魔法陣を守るための建物で、外から見るとドーム状をしていた。
「俺たち、学校に通いたくて村を出てきたんだが……」
そういうと彼は、この近くに村があることを教えてくれた。その村から時々、俺たちの目標地点である学校がある国へ行く、商人の馬車や乗合馬車が出ているらしい。
どうやってその情報を得ているのか聞くと、時々人間の国へ、魔人族が買い物に行くそうだ。
危なくないのか聞いたら、大笑いされた。
「人間に心配されるほど、オレたちゃ弱かねぇよっ!」
だそうだ。
流石に砦を任されているだけあって、強者ばかり選ばれたのだろう。
食物とかどうしているのか聞くと、どうやらこの砦の裏あたりに、畑があるらしい。肉はこの森の魔物を狩っているようだ。
「テメェらには悪いが、ここには人間が寝れるような場所はねぇ。だから、森の外まで案内してやるから、近くの村にでも泊めてもらえ」
突き放しているように聞こえるが、彼は一応俺たちのことを心配して言ってくれている。その証拠に、この森を抜けるまで護衛をしてくれると言っている。
「ま、オレらにしかわからねぇ抜け道を使うから、魔物には会わねぇとは思うがな!ガッハッハッハッ!」
またもや大笑い。俺たち自身の強さはわからないが、このマッチョさんはおそらく強い。どのくらい強いのか実際に戦わないとわからないが、面倒くさいからやめておこう。
俺のスローライフのために、ここで何か面倒ごと起こすと後が大変だからな。
目を開けたまま笑っているのだが、その目はいつ閉じるのだろうか。そこには結局、誰も突っ込まなかった。
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