学園での生活

学校に行く前に……

第12話 転移先は?

 俺たちの目の前には、今現在巨大な禍々しい扉がある。そして、俺たちはそれを見上げながら、唖然とした表情をしている。

 わかるだろうかこの気持ち。いざ村の外に出て、外の世界がどんな感じがワクワクしていた気持ちを壊されるような、まだ何かあるのかよ!っていう気持ちを。


 俺たちは村長の家から転移陣を使用してここに来たのだが、この部屋は全体がすべすべしている石で作られており、誰かが定期的に掃除しているのか清潔に保たれているように感じた。

 部屋の四隅には青白い炎が灯った松明が置かれており、魔法陣の中心にいる俺たちを照らしている。

 そうやって辺りをキョロキョロと見回していると、


 ガタンッ


 という大きくもなく、かといって小さくもない音が突然響き、扉がゆっくりと開く。そして、扉の向こう側から黒いコートを着た人物が入ってきた。

 その人物は、フードを深く被っており、一見男性か女性かわからなかったが、フードから出ている髪の長さから女性だと判断した。


「あらあら?転移してくる人間は、奴隷が一人いるって言ってなかったかしら……?

 あのジジイ、今度会ったら何をしてあげようかしら……」


 声を聞いて女性だと判断して良かった。が、何やら物騒なことをつぶやいている。俺たちの中に奴隷が一人いるって?誰のことだろうな。


「あ、おねーさん!私が奴隷のリーベだよ!」

「あら?あなたが奴隷の子?おかしいわね、奴隷に見えないのはワタシだけかしら?」


 いえ、俺たちもリーベが奴隷に見えません。

 ですが、リーベは生まれた瞬間から奴隷だったということは断言できます。


「やだなー、おねーさん。私は生まれた瞬間から奴隷で、それ以上でも以下でもないよ」

「生まれた瞬間から奴隷って……あなたは壮絶な人生を送ってきたのね……」


 何やら勘違いしていらっしゃる黒い女性。

 しかも、こちらを睨むように見て……いや、顔が隠れているから睨んでいるかもわからないんだが、俺たちの方を見ている。


「あら、ワタシの威嚇スキルを持ってしても怯まないなんて……なかなか面白い人間たちね」


『威嚇スキル』?何だそれ、能力みたいなものか?


 俺たちの反応に興味をなくしたのか、女性はため息をついて言った。


「まあ良いわ。とりあえず、あなたを魔王様のとこに案内するから、ワタシの後についてきて」

「わかりま……」


 待て。


「「「「魔王……?」」」」

「格好いい名前だねー」


 リーベ、違う、そうじゃない。魔王と聞いて聞き返さないのか?なぜその名前が今出てくるのかを。


「そうでしょうそうでしょう。なんて言ったって、魔王様は魔人族の憧れなのだから!」

「「「「魔人族……?」」」」

「へ〜、そうなんだ!」


 リーベ、違う、そこは聞き返すところだ。

 母さんから言われただろう?魔人族はどこに住んでいるのかを。どこの大陸にいるのかを。


「あら、あのジジイ……村長から何も聞いてないの?」

「「「「いや全く」」」」

「村の外に出るには魔法陣を使うとしか……」


 リーベ、今度は正しい返しをしたな。

 しかし、俺たちの言葉を聞いた女性は、頭を抱えて唸り始めた。


「マジですか……ぬぅ……」


 どうやら、学校にたどり着くのはまだまだ先のようであった。

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