第10話 村長…それは何かな?
今目の前で起こったことを、ありのままに話そう。
村長の家に行ったら、水晶玉に向かって楽しそうに話す村長と、床に何やら怪しい魔法陣を書く村長の息子がいたんだ。
何を言っているかわからないと思うが、俺も現実を見ているかどうかもわからない。
村長、その水晶玉は何かな?誰に向かって会話しているのかな?そしてその魔法陣は何かな?
閑話休題。
村を出るのは俺とリーベ、そしてライズとフェリア、ルナだ。
俺?俺は渋々学校へ行くことを了承しました。いや、経験も大事だとか、もっと常識を知ってきなさいとか、村での経験や常識しか知らなさそうな両親に言われたもんだから仕方なく了承したわけで、別にリーベだけ学校に行くのが心配だったから了承したわけではない……ツンデレじゃないからな?
でだ。村を出る際、これまた魔法陣を使用しなければいけないらしいが、精霊召喚に使用した魔法陣とは少し違うらしい。
あちらは召喚用の魔法陣だが、今回のは転移用の魔法陣らしい。それが今、村長の息子が書いている魔法陣だ。何やら古臭い本を見ながら書き写している。
俺は、村長が謎の相手との会話が終わるまで待ち、終わったのを見計らって話しかけた。
「村長、一応村を出る前ということで、挨拶をしに来たんですけど」
「む……?」
村長は、俺の言葉に俺たち5人を見て、一言唸ると考え込んでしまった。
待てや村長。まさか、村を出る前に、村長自身に挨拶しなければいけないっていう決まりを忘れていないだろうな。決めたのあんただろ?
何秒経ったかわからないが、数秒後村長は再起動して口を開いた。
「おお〜、そういえば、村を出るときは、わしに一言挨拶するんじゃったっけか」
忘れてやがった、この爺さん。
仕方ないから、ジト目で見ておこう。
隣を確認すると、リーベを除く3人も村長をジト目で見ていた。どうやら考えていることは一緒のようだ。
リーベはなんかぽやっとしてる。「もー、村長ったら〜」とか言ってる。
黙ってろリーベ。お前が喋ると、和やかな空気がすごい勢いでこっちに走ってくるだろうが。スローライフ的にはいいんだろうけど、今はそんな空気にする場面ではない。
おかしいな。リーベがミヤビだった頃よりも、天然ボケが加速してる気がする。
気のせいということにしておこう。
今は村長だ。
「ふむ。確か、ルナとフェリアは旅に。ライズとハイド、リーベは学校に通うんじゃったっけ?」
「そうよ。忘れちゃったの?パパとママが、村長にそう言ったってのを聞いたんだけど」
フェリアの両親も村長に話したのか。
いや、村長。あんた忘れすぎじゃね?歳なんじゃねえの?
「ハイド……わしはまだ年寄りじゃないぞ?」
「いや、父ちゃんは十分年寄りだぞ!!」
村長の息子は魔法陣を移し終わったのか、道具を片付けてこちらに来た。
「あ、キャラメルさん」
「ギャラメルだ!」
村長の息子であり、父さんと同い年の男性。ギャラメルさん。毎回ルナが、甘いお菓子と名前を間違えるのだが、わざとやっているのだろうか。
「
「ギャラメルだ!」
すげえギャル文字だ。
ところでリーベ、どうやって発音したんだ?
そしてギャラメルさん、どうしてわかったんだ?
相変わらず、この村の人間は謎だ。
「まあとりあえず、僕らは村長さんに挨拶しに来ただけだから……また明日、よろしくお願いします」
今日は珍しく食べ物を持っていないライズが、村長たちを見ながら挨拶をした。
この中で唯一の常識人はきっとライズだろう。
俺?
リーベにツッコミを入れることができている時点で、おそらく常識人じゃないと思うんだよね。
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