第9話 両親との会話

 次の日、俺とリーベは両親と話をした。

 主に、俺がリーベとこの村を出て学校に行くという話についてだ。


 いや、主人の許可も無しに、学校に行くとか両親に話した奴隷にきついお仕置きは無いのか、と聞かれても「無い」としか答えられないんだけどな。俺の彼女だし。甘い?いや、砂糖よりかは甘く無いはずだ。


「で、俺が学校に行くという話はどこまで進んでいるんだ?」


 俺の声に、にっこりとして答えたのは、まさかの父さん母さんの二人だった。


「「それは、ハイドとリーベちゃんが卒業して、結婚するまで」」

「話が飛びすぎじゃねえか!?」


 なんとまあ、俺が卒業した後のことまで話が進んでいらっしゃった。


 俺は隣に座っている奴隷を睨む。

 彼女はそっぽを向いて、吹けもしない口笛を吹いていた。いや、音が出てないから。「ふひゅ〜」じゃないから。っていうか口で言うな。


「一体どんなことを話したんだ?」


 まさか、俺たちが転生者でしたとか、そんな秘密まで話してないだろうな?


 そんな心配をよそに、父さんは手を顎に添えて、目を閉じながら言った。


「ハイド、運命ってすごいよな……」

「何をいきなり?」


 俺の疑問には、母さんが答えた。

 顔を少し赤らめて、頬に手を添えて言った。


「今も恋人同士にように見えるけど……」

「いや、何が言いたいんだよ」


 いや、何を言いたいのか自然とわかる。わかるんだが、嫌な予感しかしない。


 そして、俺の両親は声をそろえて言った。


「「……前世でも恋人同士だったなんて」」

「リーベ……?」


 両親に、俺たちが転生者だって伝わっていらっしゃる。

 おそらく話したのは、俺の隣に座っている奴隷だろう。

 俺はそいつリーベを睨むが、彼女は真顔でこっちを見ている。


「…………てへぺろっ?」


 母さん、あら可愛い、じゃないんですよ?

 こっちはそれどころじゃないんだから。

 あとリーベ、お前は真顔からいきなり世にも有名な「てへぺろ」をするんじゃない。あと何で疑問系なんだ。


「ハイド、そんな顔しなくてもいいのよ?」

「そうだぞハイド、人生は色々あるんだ」


 両親は頷きながらそんなことを言っているが、俺はそれどころじゃない。


「なあ……母さん、父さん」

「何かしら」「何だ」

「俺たちが転生者だって聞いて、どんな気持ちがした?」


 両親が、俺とリーベが転生者であることを知り、それについてどんな感情を持ったか恐れているんだ。


 恐怖?嫌悪?拒絶?転生者だと聞いて、どんな感情を持っているんだ?


「「いや、別に何も」」


 俺の心配と緊張と恐れを返してくれ。


「実はな、お前らは父さんたちの本当の子供じゃないんだ」


 ここで驚きの情報を打ち込むのはやめてくれないか。空気を読め父さん。


 しかし、リーベはともかく俺も本当の子供じゃないとはどういうことだ?


「まさか……ある雪の降る寒い日に扉の前に置いてあったとか」

「ロマンチックだよねー」


 リーベ。お前は黙っていろ。緊張した空気が脇目も振らず逃げていくだろうが。

 しかも、そんなロマンがあってたまるか。寒いし下手すれば凍死コースだ。


「いや、朝起きたら枕元にお前らの入った籠が置いてあった」


 サンタクロースからのプレゼント状態!?


「子供ができない父さんたちにとっては嬉しい出来事だったけどな……」


 そうか……父さんたちは、子供ができなかったのか。

 だからと言って疑いもせずその子供を育てるって……もしそれが悪魔だったらどうしたんだよ。


「ま、色々あって、お前らがここまで育ってくれて父さんたちは嬉しいぞ!」

「もうちょっと色々教えたいけど……学校に行くなら仕方ないわよね」


 待て母さん。俺たちにまだ何か教えるつもりか?

 もう十分だと思うんだが。


 あと、俺はまだ学校に行くことを了承していない。


「ハイド」

「何さ、父さん」


 父さんは急に真剣な顔になり、俺の方をまっすぐ見た。

 そして、にっこりと笑うと、しっかりと言った。


「村長にもすでに話してあるから、お前に拒否権は無いぞ」

「いい顔でサムズアップしながら言う言葉じゃねえよ!!」


 ということで、俺は学校に行くことになりました。


 俺のスローライフはどこをほっつき歩いているんだろうな?

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