第6話 昔話

 昔々……そうだね、あなたたちの母さん自身がまだ生まれるずーっと前の話。まだ大陸が一つだった頃だから、多分二千年くらい前の話でしょうね。


 世界には『死の精霊』を筆頭にした負の精霊と、『生の精霊』を筆頭にした正の精霊が散らばって生活していました。そしてこの世界には、人間や獣人、魔人など様々な種族も暮らしていました。

 しかし、文化の違いから、種族間で戦争が勃発し始め、世界は火の海になりました。


 その戦争には、数々の精霊たちが巻き込まれ、精霊は数をどんどん減らしていきました。

 それを見た『死を司る精霊』と『生を司る精霊』は、その戦争を止めようと人の姿になって、様々な種族と話し合い、和解し、戦争の種を見つけることに成功しました。

 戦争を止めるための原因を見つけた、と喜んでいた二柱でしたが、戦争の種が自分たちだと知ると、その喜びは冷め、逆に精霊同士で喧嘩をし始めました。


 『死の精霊』は、戦争で死をばら撒いているなどと、根拠のないことを『生の精霊』に流され、『生の精霊』は、不死の世界を作り出そうとしている、などと根も葉もない噂を流されていたのです。


 そして、『死の精霊』の悪い噂を流していたのは魔人や獣人。『生の精霊』の悪い噂を流していたのは人間や亜人だということがわかり、それぞれの文化や宗教の違いで種族間の戦争が起こったことも分かったのです。


 それを知った精霊同士の喧嘩は、そこに暮らす生命を巻き込み、大陸をバラバラにし、所々で歪みを生じさせました。


 その光景を見ていた神様は、二柱を封印し、世界を浄化し、再び平和な世界になりました。

 今でも、世界のどこかには、『死の精霊』と『生の精霊』が封印された場所があるそうです。


 めでたしめでたし。


「母さん、一つ良いか?」

「何かしら?」


「種族とか大陸とか、その他文化とか神様とか諸々、俺たち何も知らないんだけど?」


「え、言ってなかったっけ?」


 母さんは、『他のところで話したから、きっと俺らも知っているだろう』を発動したため、とりあえず怒鳴るように言っておいた。


「聞いてねえよ!!」


 『死を司どる精霊』と『生を司る精霊』は、うちの両親がお恥ずかしいことをしました。と言っていたが、下手すれば生命が滅んでるし、今封印されてるとか言ってなかったっけ?

 どうやって生まれたんだお前ら。

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