第5話 死を司る精霊と生を司る精霊
とりあえず、奴隷のくせに主人の衣類を盗もうとしていたリーベを拳で大人しくさせてから、俺たちは朝ごはんを食べに行った。もちろん、サナトスとゼンを連れてだ。
彼女たちは食事をとらず、自分の主人の魔力を食べるらしいが、俺自身から魔力を取っている感じもしないし、俺に常時触っているわけでもない。本当にどうやって食べているのやら。
居間に着くと、もう既に朝食は用意されていて、母さんは父さんが使った皿を洗っている最中だった。きっと父さんは畑仕事にでも出かけたのだろう。
朝食を食べようと椅子に座ろうとしたら、母さんの精霊の猫が居座っていた。椅子だけに。
……いや、くだらないことを言うのはやめよう。
「いっただっきまーす!」
見ると、すでにリーベは朝食を食べ始めていた。
いや、奴隷が主人より先に食べてどーするよ?別に俺たちにはそんなの関係ないんだろうけどさ。でも、もし規則とかにうるさい奴が見たら、絶対に何か言われるに決まってる。直すつもりは全くないし、父さんも母さんも何も言わないから何もしないけど。
さて、猫をどかして俺も朝食を食べるか。
「あら、その子達は誰?ラムが反応したから来てみたけど」
母さんの精霊の名前、ラムだったんだ。初めて知った。ラムって麦のことだったっけ?
俺は母さんに、俺とリーベの精霊のことを話した。
「ふーん、死を司る精霊と、生を司る精霊ね……それ、昔話にも登場しているの、知ってる?」
は?なんていった、この母さん。
「いや、そもそも、昔話なんて聞いたことないし」
「あら、話してなかったかしら?」
他の子にでも話したのだろう。だからと言って、俺たちに話したつもりになるのはどうかと思う。いや、前世で俺も結構あったから人のことは言えないが。
しかし、昔話か……どんなことやったんだろうな?
そう思って、二人を見る。
あれ?どうして目を合わせようとしないんだろうか。
何をやったんだろうか、そしてなぜ俺たちの精霊になったのだろうか。
わー不思議。
『何を見ているのかね?やったのは私のお母さんとお父さんですよ?』
『そうだよ?僕ら、何もやってないよ?』
お前ら
いや、突っ込むべき場所はそこじゃない。
「あなたたちのご両親が何かしたっていうのが、昔話に関係してくるんだけど」
『やらかしたというよりですね……ちょっと夫婦喧嘩をですね?』
「あらあら」
夫婦喧嘩が昔話に?恥ずかしいことや、有る事無い事伝わっているんじゃないだろうか。だって、伝言ゲームの結果が何かおかしいことになるのは目に見えているんだし、俺は一度も伝言ゲームを成功させたことがないからな。
「じゃあ、私がちょっと昔話をしましょうか」
せめて、朝食が終わってからにしてほしい。
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