辺境の村での生活

第1話 成人するまでの道のり

 俺の前世の記憶が戻ったのは、3歳になってから。そして、ミヤビの記憶が戻ったのも、同じ3歳になってから。

 それ以前の記憶は無いし、赤ちゃんの時に何があったのかは思い出さなくてもいいだろう。きっと羞恥に悶えるだろうから。


 さて、俺は辺境の村で生まれた。名前はハイド、生まれながらにして気配を消すことができるため、いたずらが絶えない問題児だった……らしい。なんでだよ!今もいたずらしてるから否定できないけどさ!

 そして、ミヤビが貰った名前は、リーベ。生まれながらにしてハイドの奴隷だったにも関わらず、村の人々に愛されて育った少女。普通だな。

 で、ハイドとリーベの関係は、主人と奴隷。だけど、主人の俺が命令しても、奴隷の彼女は命令を拒否することができた。そんなもんだと思って、特に深くは考えなかったけどな。


 村には辺境なだけあって名前が無い。だけど、誰か貴族の領でも無いため、税を納める必要が無いのが唯一の救いだった。

 なぜなら、畑は一件に一枚。広さは一件を除いて1ヘクタールと意外に広い。さらに家は結構多い。そのおかげで、辺境の村とは言われているが、村自体はとても広い。国と呼ばれてもおかしくないほどに。

 村の周りは高さ5メートルほどの、木でできた壁で囲われているのだが、向かいの壁が小さく見えるほど広いのだ。


 家族構成は、爺ちゃん婆ちゃん、父さん母さん、俺、リーベだ。

 俺の父さんはそんな村の守人と呼ばれる、魔物から村を守る団体の一人で、村に魔物が襲いに来た際に戦っていたのを何回も見たことがある。それに憧れて、父さんに剣や弓などの武器の使い方を一通り教えてもらった。もちろん、リーベも一緒にだ。

 母さんは、俺たちの面倒を見てくれるが、守人たちを魔法で支援していたのも見たことがある。武器だけではなく、魔法にも憧れていた俺たちは、母さんに魔法を一通り教えてもらった。


 父さんと母さんは、大型の魔物より強く、そして格好良かった。そんな二人が、俺たちの目標だった。


 *****


 月日が経ち、俺とリーベの二人が8歳になった頃。そして、大好きな爺ちゃんと婆ちゃんが亡くなった頃。

 気づいたら友達ができていた。

 それが、フェリア、ライズ、ルナの3人だ。


 フェリアは金髪ツインテールの女の子で、俺たち5人のリーダー的存在だ。ただ、目の作りが暗い場所に特化しているため、明るいところでは目隠しをしている。

 ライズはぽっちゃりとした坊主頭の男の子で、食欲旺盛なため家の畑が2ヘクタールあり、畑仕事は彼の爺ちゃん婆ちゃんと二人の精霊、あとは彼の父さんとその精霊が管理しているらしい。

 ルナは銀髪ロングで金眼の女の子で、グループの中で一番おとなしい性格をしている。母親が俺の母さんと友達で、よく魔法を教えているらしく、魔法の扱いが上手らしい。


 俺を含めた5人のグループには、それぞれ長所と短所が存在していて、俺たちはそれを補いながら遊んだ。どんな遊びか?それは、守人たちに勝負を申し込んで実践的に戦う、というものだ。

 正直、初めは怖かったが、今は勝てば嬉しいし、負ければ悔しい、と思えるようになっていた。守人にとっても、子供のグループのような、先の読めない実践ができるから、喜んで相手をしてくれていた。まあ、さすがに母さんみたいな魔法使いが、後ろで支援し始めた時は焦ったが……。


 そういえば、この世界に転生して記憶が戻った後、俺の部屋で不思議なことが起こるようになった。俺の部屋と言っているが、俺とリーベは個々の部屋を持っている。なぜなら、両親が「何か間違いがあったら困る」ということで、二つの部屋を作ってくれたらしい。

 しかし、部屋を作ってくれたにも関わらず、俺の部屋からあるものが消えることがある。

 そのある物とは、俺が脱いだ服や、下着など……いや驚いたよ?脱いで畳んだ後、目を離すと無くなっているんだから。

 で、大抵後で探すと、すでに洗ってあり外に干されている。


 本当に謎だ。


 部屋は壁があるため、隣のリーベの部屋から俺の部屋に来ることはできないし、来るとしても扉を開けなければいけないため、俺が気づかないはずがない。だから、リーベ……ミヤビが持って行っているという考えは否定した。

 さすがに、前世で幼馴染兼彼女をやっていた女の子が、俺の脱いだ衣服を持っていくなんてことはありえないからな……そう、何もなかったはず。

 壁も調べたが、何も細工をした形跡はないし、どこも動いたりしないことはわかっている。


 その謎はいつか解くとして、そんなことがありながら、月日は流れ、俺たちは15歳になった。

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