第5話忍ぶ恋

鏡太郎きょうたろうは歩きながら、思い出していた。


折口玲子おりぐちれいこと八王子に来たのは数えるほどだと思う。


駅ビルの中で家電製品を物色したり、喫茶店で珈琲を飲んだくらい。


特別な思い出があったか……。思いつかない。


時計を見ると7時になろうとしてる。タイムリミットだ。


玲子と共通の友人がいないので、詮索はできない。

そういや玲子は地元で会うのを避けていた。「忍ぶ恋が好きなの」


冗談で言っていたのかと思っていたが、まあ僅か半年の交際だ。


彼女の闇の部分まで分かりようもない。


八王子駅の改札を抜ける直前に女性と衝突してしまう。


「失礼、大丈夫ですか」


女性はサングラスにマスクをしていて、俺を見たら眉が上がり逃げるように駆け出す。後ろ姿が玲子に似てる。


まさか!追いかけるがほんの数秒の差で見失う。


その時携帯にメールが入る。


鏡太郎はメールに目を通す。


これは面倒だぞ。


2018(H30)4/7(土)




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